研究課題
本研究では、RaPID display法を応用し、膜タンパク質等の細胞表面分子を標的とする特殊環状ペプチドの探索手法の確立を目指している。通常のdisplay法では、磁気ビーズ上に固定化したタンパク質をペプチドライブラリに提示させるが、膜タンパク質の場合には精製・可溶化が出来ないものが多く、磁気ビーズ上に固定できないケースが多い。そこで本研究では、標的タンパク質を発現した培養細胞株やバキュロウィルスを用いてdisplayを行っている。これまでのところ、CD20、Claudin-1、Claudin-4、Fasレセプター、アセチルコリンレセプター、インテグリンを標的とする特殊環状ペプチドのセレクションを既に行っており、これらのうちCD20、Claudin-1、Claudin-4、インテグリンについてはセレクションが完了し、特殊環状ペプチドが得られている。現在これらのペプチドを化学合成し、結合力の評価、阻害活性の評価、標的タンパク質との共結晶構造解析などを進めている状況である。平成25年度においては、新たな標的としてIL28RAに結合する特殊環状ペプチドのセレクションを開始した。IL28RAはインターフェロンλのレセプターであり、インターフェロンλが結合することにより活性化し、抗C型肝炎ウィルス(HCV)活性を示すことが知られている。したがって、IL28RAに結合し活性化する特殊環状ペプチドを得られればインターフェロンλに代わる新規抗ウィルス剤として期待できる。現在のところ、セレクションは完了しいくつかのペプチド配列が得られているため、今後それらのペプチドの結合力の評価、抗ウィルス活性の評価を行ってゆく予定である。
2: おおむね順調に進展している
これまでのところ、当初に計画していたCD20やインテグリンの他、Claudin-1、Claudin-4、Fasレセプター、アセチルコリンレセプター、IL28RAといった多数の標的タンパク質に結合するペプチドの探索に着手しており、そのうちの多くの標的について実際に結合するペプチドが取得できており、結合ペプチドの探索法を確立すると言う当初の目標は達成されつつあると考える。結合力の評価についてもある程度進んでおり、2年目までの計画目標は十分に達成できていると考える。
今後は、現在までに取得したCD20、Claudin-1、Claudin-4、インテグリン、IL28RA結合ペプチドの結合力の評価、阻害活性の評価、細胞毒性や生体内安定性の評価、標的タンパク質との共結晶構造解析などをさらに詳細に進める予定である。これにより、将来的に医薬品として開発してゆく道筋をつけたいと考えている。また、現在のところまだ達成できていないFasレセプター結合ペプチドの探索についても引き続き条件検討を行い、ペプチドの取得およびその後の評価を進めることを目指す。
当初の計画では、標的となるタンパク質の数をそれほど増やさずに2年目までにある程度細胞を使ったペプチドのアッセイや構造解析に入る予定であり、そのための試薬等の消耗品を購入する予定であった。しかし実際には、特定の標的タンパク質に結合するペプチドのアッセイを進めるよりも、多種類の標的タンパク質に対するペプチドのセレクションを優先したために、多少予算の使用が後ろ倒しになった。ただし、3年目にはこれまでに得られているペプチドの機能・構造解析を多数進めて行く見込みであるため、そのための費用として使用する予定である。ペプチドのセレクションが終了していない標的タンパク質については、セレクションを継続するほか、既にペプチドが取得できているものについては細胞アッセイや構造解析などを進めてゆく。したがって、主にそのための実験消耗品購入費用(物品費)に充てる。また、学会発表および共同研究先への訪問費用として旅費を計上する。
すべて 2014 2013
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (1件) (うち招待講演 1件)
Annu. Rev. Biochem.
巻: 未定 ページ: 未定
Molecules
巻: 18 ページ: 10514-30
10.3390/molecules180910514
Nature
巻: 496 ページ: 247-51
10.1038/nature12014
進化分子工学
巻: なし ページ: 49-60