本研究は中国農村でのオーラルヒストリー調査によって、「順口溜」(シュンコウリュウ)という覚え歌に残された普通の人々の意識を読み取り、共有された記憶について考えてきた。具体的には1)日中戦争対日協力者の記憶を論じ、また順口溜の流布する範囲が雨乞いを共同で行う地域と合致することから、2)雨乞いのコミュニティを見出した。雨乞いは起源神話である『趙氏孤児』を支柱として社会混乱や政治的迫害を乗り越えてきたことから3)『趙氏孤児』の物語が織りなす中国人の精神性と、物語のヨーロッパへの伝播についても調査を行った。これらは中国のコミュニティ論や中国とヨーロッパとの歴史的な繋がりを論じる新な視覚をもたらした。
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