研究課題
若手研究(A)
本研究の目的は古代メソアメリカ文明における初期国家の形成プロセスを解明することにある。メキシコ中央高原では後2世紀頃、古代都市テオティワカンが国家を形成した。しかし、先行研究では、この国家形成プロセスを考察する際、先行社会との繋がりを重視せず自生的に発展したとの観点から議論が行われている。本研究では、この発展プロセスを解明するため歴史的連続性を重視し、国家形成以前の社会を研究対象とする。そのため、テオティワカン以前の政治・経済的拠点の一つであったトラランカレカ遺跡の調査を実施する。この研究課題解明に向け、平成24年度の研究実施計画では、航空レーザー測量、地形測量、表面採集調査、遺物整理に力点を置き調査を実施した。結果、地形測量では古代都市中心部の三次元地図が完成し、平成25年8・9月こ翌年2・3月に行う発掘調査地区の選定や、都市プランの解明に向けての重要なデータが得られた。一方、表面採集調査から先行研究で指摘されていたことと異なる歴史像が見え始めてきた。これらの成果を平成25年4月4日に開催されたSociety for American Archaeologyで発表した。また、本年度の活動内容や成果について、専用WEBサイトを作成し、数か月後には公開できる目途が立った。具体的な成果として以下が挙げられる。まず、航空レーザー・地形測量の三次元地図を基に、都市内部の建造物群に少なくとも3つの異なる建築方位軸が確認でき、ここから複数の政治グループが存在し、合議によってトラランカレカを支配していたとの仮説を立てることが可能となった。もう一方は、先行研究ではテオティワカンが活動を開始する時期に、トラランカレカ遺跡は放棄されていたと解釈されていたが、同時代にも活動の痕跡があったことを立証するデータが確認できた。結果、今後メキシコ中央高原内におけるトラランカレカとテオティワカンの地政学的関係を考慮し、この時期の歴史像を復元することが重要なテーマとなる。
2: おおむね順調に進展している
平成24年度では、メキシコ現地調査の活動として、(1)航空レーザー並びに地形測量調査、(2)表面採集調査とトレンチ調査、(3)黒曜石の科学分析、(4)漆喰のサンプリングを実施する予定であった。しかしながら、トレンチ調査と漆喰のサンプリングは行うことができなかった。これは、地形測量と表面採集調査の予定範囲を拡大したことに拠る。その結果、先行研究で指摘されていた歴史像と異なった解釈が提示可能となり、本研究のテーマ解明に向け、貴重なデータを獲得することができた。
本年度より発掘調査およびボーリング調査を開始する。発掘調査では、古代都市の活動開始時期と放棄時期の把握、ボーリング調査は遺跡の中心地区で行い、各地区の活動内容の変遷の解明に努める。一方、遺物の分析からは、交易圏の復元や集権化の度合いを考察していく。
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Constructing, Deconstructing, and Reconstructing Social Identity : 2,000 Years of Monumentality in Teotihuacan and Cholula
ページ: 19-40
ページ: 139-154
http://www.tlalancaleca.com/jp/index.shtml