研究課題/領域番号 |
24682005
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研究機関 | 愛知県立大学 |
研究代表者 |
嘉幡 茂 愛知県立大学, 国際文化研究科, 研究員 (60585066)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | メソアメリカ / トラランカレカ / テオティワカン / 古代国家 / 交易 / 複雑社会 / 都市計画 / 王権 |
研究概要 |
本研究の目的は古代メソアメリカ文明における初期国家の形成プロセスを解明することにある。メキシコ中央高原では後2世紀頃、テオティワカンが古代国家を形成した。しかし、先行研究ではこの国家形成プロセスを考察する際、先行社会との繋がりを重視せず自生的に発展したとの観点から議論が行われている。本研究では、この発展プロセスを解明するため歴史的連続性と自然環境の影響力を重視し、先行社会に属するトラランカレカ遺跡で調査を実施している。 25年度は、トータルステーションを用いた地形測量、表面採集調査、ボーリング調査、ならびに発掘調査に力点を置いた。地形測量を基に都市中心部と周辺地域の三次元地図を完成させ、建築方位軸の相違が確認できた。一方、ボーリング調査から土壌サンプルを回収し、現在南フロリダ大学で現在科学分析を実施しているが、当遺跡を衰退へと導いた火山噴火の影響力を知るデータが提示できると考えている。発掘調査に関して、遺跡中心部の「主要広場」で6ヵ所トレンチを開けた。ここから回収された遺物を用いて、現在は、詳細な土器編年の確立するため肉眼分析を行っている。これらの成果を平成26年4月に開催されるSociety for American Archaeologyで発表することが決定している。また、現在までの活動内容や成果について、専用WEBサイトを作成し、情報公開を行っている。 具体的な研究成果は、先行社会とテオティワカンとの歴史的連続性について、興味深いデータを得ることができた点である。従来、テオティワカンの経済的発展要因として、近郊に位置する黒曜石原産地の支配が挙げられ、この原産地での大規模採掘はテオティワカンに起源があると考えられていた。しかし、トラランカレカ遺跡からもまとまった出土量が確認された。これにより、採掘技術の継承という面から連続性を指摘できると考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成25年度に、トータルステーションを用いた地形測量、表面採集調査、ボーリング調査、そして発掘調査を実施したが、大規模には発掘調査を実施することができなかった。これは、ボーリング調査に、より多くの時間をかけたことにある。優先理由は、ボーリング調査から得られる古環境復元とトラランカレカ遺跡の衰退要因を自然環境面から解釈できるデータの獲得にあった。平成24年9月24日から27日まで開催された国際学会「トラスカラ・プエブラ地域の考古学」に発表者として招聘され、その際、この地域の古環境復元が学界動向の一つとして急務であると理解したことが大きい。一方、発掘調査に関して、本年度夏に大規模調査を予定しており、昨年度の遅れを取り戻すことが可能だと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度は本課題研究の最終年度であるため、研究データの総合解釈と成果の発信を最重要課題にする。今夏に行う大規模発掘調査までに、前年度の調査から得られたデータの分析と解釈を行う。特に、黒曜石の科学分析やボーリング調査から得られた土壌サンプル分析を研究協力者と共に実施し、古代交易システムや古環境の復元研究に取り組む。 一方、国際論文出版に向け、大規模発掘調査以降、ここから得られるデータも含め、総合解釈に努める。12月中旬には京都外国語大学・国際文化資料館において、本課題研究の目的や成果を一般の方に理解してもらう写真展と講演会を企画している。また、同大学において、「古代メソアメリカ文明:考古学の現状と課題」をテーマに日本人研究者を招へいしシンポジウムを実現させる。その後、本課題研究の成果を含めた報告書を出版する予定である。 これらの活動を通して、本課題研究の成果を日本のみならず、メキシコやアメリカに発信する考えである。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度使用額は609円であり、本年度この額を利用して備品などを購入し収支を0にする必要性がなかったことによる。 今夏に実施する発掘調査の備品購入費として利用する。
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