研究課題/領域番号 |
24683018
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研究機関 | 立教大学 |
研究代表者 |
三澤 仁平 立教大学, 社会学部, 助教 (80612928)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 健康の社会的決定要因 / 健康格差 / 地域 / 地域意識 / 社会調査 |
研究実績の概要 |
健康の社会的決定要因として、個人を取り巻く社会環境、とりわけ、地域に注目が集まっている。さまざまな地域特性が健康と正の関連があることは知られているが、それら地域特性の経時的変化や地域に対する住民の認識・評価(地域意識)の観点から、健康との関係は明らかにされてはいない。さまざまな地域特性を複合的にとらえ、健康との関係を明らかにすることは、まちづくりや健康・地域政策的にも重要と考える。そこで、本研究では、住民の地域意識を考慮に入れるとともに、それら意識とさまざまな地域特性の経時的な変化とがどのように関連しあって、地域住民の健康と関係するのかを明らかにすることを目的とする。 平成26年度では、前述した目的を達成するために、以下の点を中心に研究をおこなった。 まず、昨年度に実施した大規模社会調査では調査対象としなかった年齢階級群を対象とした統計的社会調査をおこなった。具体的には、東北地方に居住する20歳から49歳までの男女1000人を対象としたインターネット調査を実施し、さらには東北地方に在住する20歳から79歳までの男女1013名を対象とした留置法による調査員調査を実施した。 つぎに、既存の社会調査データを使うことで、地域と健康との関連について統計学的に解析をおこなった。 さらにこれらの研究をすすめる過程において、「健康の社会的決定要因」研究が、健康概念の多義性を抱えているということと、要素還元主義に偏重しているということの2つの問題点が考えられた。したがって、本研究でえられた、地域(社会構造)と健康との関係の結果から、健康の本質的意味、つまり、健康にかんする哲学的・倫理学的論考を精査し、現代社会(リスク論)との関係を考察する必要が考えられた。 これらの研究成果をまとめて、国内外において学会・論文で報告した(日本語論文2本、国内学会報告1本、国外学会報告3本)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
最終的には質の高い社会調査データをえることができたのはよかったが、地域と健康との関係を明らかにする研究過程において、健康の社会的決定要因研究における健康の多義性や要素還元主義的偏重の問題がえられた。これらの問題を解決するために、社会調査データの獲得にやや時間がかかったためである。
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今後の研究の推進方策 |
まずは、健康の社会的決定要因研究における健康の多義性や要素還元主義的偏重の問題を解決する必要があると考えられる。これは現代社会における地域の社会構造というマクロな現象と健康との関係をとらえるうえで、欠かせない作業である。したがって、現代社会におけるわれわれ日本人の精神性を哲学的・倫理学的・精神病理学的論考から明らかにし、その上で、地域と健康との関係について検討したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
社会調査を実施する目的で多くの予算額を計上していたが、社会調査にかかる費用が比較的安価であったため。
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次年度使用額の使用計画 |
健康の社会的決定要因研究の問題としてあげられた、健康概念の多義性と要素還元主義偏重の課題をクリアにするため、多くの参考文献を購入する費用として予定している。
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