研究課題/領域番号 |
24683018
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研究機関 | 立教大学 |
研究代表者 |
三澤 仁平 立教大学, 社会学部, 助教 (80612928)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 健康の社会的決定要因 / 健康格差 / 地域 / 地域意識 / 社会調査 / 健康論 |
研究実績の概要 |
健康の社会的決定要因として、個人を取り巻く社会環境、とりわけ、地域に注目が集まっている。さまざまな地域特性が健康と正の関連があることは知られている。しかし、それら地域特性の経時的変化や地域に対する住民の認識・評価(地域意識)の観点から、健康との関係は明らかにされてはいない。さまざまな地域特性を複合的にとらえ、健康との関係を明らかにすることは、まちづくりや健康・地域政策的にも重要と考える。そこで、本研究課題では、住民の地域意識を考慮に入れるとともに、それら意識とさまざまな地域特性の経時的な変化とがどのように関連しあって、地域住民の健康と関係するのかを明らかにすることを目的としている。ただし、これらの目的遂行のためには、「健康の社会的決定要因」研究が、健康概念の多義性を抱えていると言うこと、要素還元主義研究に陥っていることの問題を解決する必要があると考えられた。 そこで、平成27年度では、1)これまでに収集した社会調査データを用いて、健康に影響する社会的要因を明らかにする実証研究を実施するとともに、2)既存の健康に関する哲学的・倫理的論考(健康論)を収集することで、「健康の社会的決定要因」研究の問題を抽出するための基礎概念の導出をおこなった。1)は、東日本大震災の被害をうけた地域住民対象の反復横断の社会調査データを用いて、社会的不安感と精神的健康との関連を学会で報告した。さらに、地域で死ぬと言うことの意味を地域意識との観点から論文をまとめた。2)について、日本人の精神性として「かなしみ」「執着」があり、そしてそれがうまれる背景には日本という地域風土が関連している可能性が考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
社会調査データを用いた実証的研究を実施できたことはよかったが、健康論を理論的に整理するために基礎概念を導出するのに時間がかかった。
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今後の研究の推進方策 |
まず、これまで収集した社会調査データを用いて、地域と健康との関係を実証的に精査する必要がある。つぎに、健康論の基礎的概念を抽出することはできたが、これらの概念の意義を学会報告・論文としてまとめ、健康論の新たな発展に結びつける必要がある。
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次年度使用額が生じた理由 |
これまで収集した社会調査データを用いて、地域と健康との関係を実証的に精査する必要があることと、健康論の基礎的概念を用いた論文・学会報告をおこなう必要があるため補助事業期間の延長申請を行った。
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次年度使用額の使用計画 |
まず、国際学会で精神的健康をアウトカムとした実証研究の一部を示し、国内学会で健康論の新展開に関する報告を行う。つぎに、これらで得られたコメント等を参考に、精神的健康と地域との関係についての実証研究に関する英文論文、健康の社会的決定要因における根本問題を示した和文論文および健康論の新展開に関する和文論文を執筆・投稿する。
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