研究課題/領域番号 |
24683020
|
研究機関 | 同志社大学 |
研究代表者 |
及川 昌典 同志社大学, 心理学部, 准教授 (40580741)
|
研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
|
キーワード | 意識 / 無意識 / 自己制御 / 自動性 / 社会的認知 / 社会心理学 / 国際情報交換 / 多国籍 |
研究概要 |
平成25年度は、前年度の研究成果(精緻化された多重自動性モデルとその調査データ)を踏まえて、多重自動性モデルから導かれる新たな仮説の検証を行った。2つの研究(実験・調査)が行われた。 まず、種類の異なる自動性に依存した潜在態度の測定を、異なる文化圏(アメリカ、イスラエル、日本)で実施した。これにより、文化依存性/文化独立性(通文化性)の観点から、生得的な自動性と獲得された自動性の特徴の違いについて実証的な検討がなされた。 心的過程には、文化を問わず同様の結果をもたらす経路と、文化に応じて結果が異なる経路が存在すると考えられる。多重自動性モデルに基づけば、生得的な自動性は意識的にアクセス可能な文脈情報に影響されない頑健な特徴を持ち、一方で、獲得された自動性は意識的にアクセス可能な文脈情報の変化に柔軟に対応する性質を持つものと考えられる。このことから、生得的な自動性は文化を問わず一定の結果を導くが、獲得された自動性は文化に応じて異なる結果を導くことが予測される。日本人参加者と他文化参加者とでは、報告されるエージェンシー感覚の程度が異なるが、この国別の差は主に意識的な内省過程の働きに起因したもので、意識を必要としない自動的過程を通じて生じるエージェンシー感覚には、国別の差が認められないことを見出した。 また、自動性の発達を検討するために、乳幼児(0歳から5歳)とその母親を対象に、縦断的調査及び実験が行われた。約60組の対象者は平均3カ月ほどで3回の面接と課題調査を受け、日常における自己制御における自動性がどのように発達していくかを記録された。この調査により、自動性の生得的な側面が明らかにされた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
多重自動性モデルに基づく仮説の検証を目的とした実験および調査は、当初より計画されていた研究はおおむね順調に進展している。また、その成果は国内外の学会発表で一定の注目を集めており、また、平成24年度の研究成果の一部は社会心理学領域において基礎と応用を結ぶ研究として、国際誌にも掲載された。 種類の異なる自動性に依存した、潜在態度ならびに顕在態度を測定するために開発された実験手続きや心理尺度の妥当性を検証することを目的とした一連の調査ならびに実験は、オランダ、イギリス、アメリカ、イスラエル、日本の各国において、ほぼ計画通りに実施された。ただし、海外の共同研究者の都合などにより、研究実施のための期間がもう1年間延長されることとなった。 また、乳幼児とその母親を対象とした、自動性の発達を検討するための調査および実験が実施された。この研究の追跡調査は、次年度も継続される予定である。
|
今後の研究の推進方策 |
海外の共同研究者の都合などにより、平成25年度に予定されていた研究の実施が次年度に先送りされることとなった。また、これまでの結果成果を踏まえた追跡調査の実施が予定されている。平成26年度は、次に示す通り、当初の研究計画に基づくこれらの研究の推進にあてられることとなる。生得的な自動性と獲得された自動性の文化比較については、オランダ、イギリス、アメリカ、イスラエル、日本での調査および実験の実施が予定されている。また、乳幼児とその母親を対象とした、自動性の発達を検討するための調査および実験の追跡調査の継続が予定されている。
|
次年度の研究費の使用計画 |
海外の共同研究者の都合などにより、平成25年度に予定されていたオランダ、アメリカ、イスラエル、日本における研究の実施が一部次年度に先送りされた。また、乳幼児とその母親を対象とした調査および実験を継続する必要性が生じた。 実施時期の延期・延長を除けば、当初より計画されていた通りの研究が遂行される予定である。生得的な自動性と獲得された自動性の文化比較研究については、オランダ、アメリカ、イスラエル、日本の各国において研究の実施が計画されている。また、自動性の発達についての研究は、平成25年度に対象となった約60組の乳幼児とその母親を対象として、追跡調査ならびに実験が行われることが計画されている。
|