本研究は、政権交代に伴い教育分野を主とした政策過程・政策内容の変容に関して実証的な分析を行うものである。 平成27年度においては、1990年代以降の文部科学行政における政治行政過程に関するヒアリング調査を実施すると同時に、平成26年度に引き続いて、第二次安倍政権下における教育政策過程に焦点を当てながら分析を行い、政策過程及び政策内容の分析を行った。 第1に、政策過程に関しては、戦後教育法制の再編過程とも位置づけ得る、1990年代以降の文部科学行政における政治行政過程に関して、教育関係者に対するヒアリング調査を実施した。具体的には、元文部省関係者に対してキャリアの展開に応じたテーマオーラルを実施し、大臣官房総務課、初等中等教育局、都道府県教育委員会への出向、助成局地方課、体育局、教育関係審議会における政策形成・実施のダイナミズムに関する理解を深めてきた。 第2に、政策内容に関しては、(1)学校制度の多様化の事例として一貫教育(小中一貫教育、中高一貫教育)の制度化、(2)公教育の民営化の事例として公設民営型学校の制度化、(3)教員の多忙化解消策としての「チーム学校」の制度化、(4)地方教育行政の変容過程としての教育委員会制度改革等に関する政策内容の分析を行った。とりわけ、学制改革に関する諸提言は、現行の学制が子どもの発達段階、能力・個性に柔軟に対応可能なものとなっているのか、統合(integration)と接続(articulation)をクロスさせた制度デザインの全体像を改めて問うものであることを指摘すると同時に、政策評価の観点として、一貫した教科・生徒指導の展開や豊かな社会性や人間性の育成、多様な資質・能力の伸長を企図した系統的・継続的な学習の展開に対する期待の他、いじめ・不登校・暴力行為の推移、生活リズムの改善、学力の向上、教職員の仕事満足度などがあり得ることを提起した。
|