研究課題/領域番号 |
24684002
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研究種目 |
若手研究(A)
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
藤野 修 京都大学, 理学研究科, 准教授 (60324711)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 極小モデル / 混合ホッジ構造 / モジュライ空間 / 安定多様体 / 半対数的標準対 / 半正値性 |
研究概要 |
高次元代数多様体の双有理幾何学の研究を続けている。24年度の最大の成果は、安定多様体のモジュライ空間の射影性に関して最良の結果を得た点である。安定曲線のモジュライ空間は古くから調べられており、非常に内容が豊富な分野である。この安定曲線のモジュライ空間の理論を高次元化しようという計画が1980年代後半に始まった。ここ数年の極小モデル理論の大発展の結果、安定多様体のモジュライ空間を代数空間として構成することが可能になっていた。しかし、その代数空間が射影的であるかどうかは未解決であった。もう少し詳しくいうと、モジュライ空間の射影性はKollar氏の結果より直ちに従うと思われていたが、実際は高次元安定多様体のモジュライ空間の射影性に必要な事実はまだ証明されていなかった。そこで私は、ある種のベクトル束の半正値性定理と半対数的標準対の部分特異点解消の理論を駆使し、安定多様体のモジュライ空間の射影性の問題を最良の形で解決した。考えているモジュライ関手がKollar氏の意味で半正値性を満たすことを示したのである。この仕事の前段階として、藤澤太郎氏(東京電機大学)との共同研究がある。藤澤氏と共同で混合ホッジ構造の変形理論を調べた。この仕事はここ数年間断続的に行ってきた大掛かりな共同研究であった。単純正規交差対の族に付随する混合ホッジ構造の変形を考え、ホッジ理論的な半正値性を示してる。これがモジュライ空間の射影性の証明の一番の核心部分である。また、最近の特異点解消定理の結果を使い、半対数的標準対の部分特異点解消について決定的な結果を得た。この結果、半対数的標準対にたいして極小モデル理論の基本定理がすべて証明出来た。半対数的標準対の部分特異点解消の存在も、モジュライ空間の射影性の証明の核心部分である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
高次元代数多様体の双有理幾何学はここ数年爆発的に発展している。私もその発展に少しは貢献していると自負している。発展は予想以上に早いので、1年先の計画を立てるということがあまり意味がないような気がする。
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今後の研究の推進方策 |
今後も高次現代数多様体の双有理幾何学の研究を推進する。ここ数年発展が激しい分野なので、その時点で最良だと思う選択をし、分野の発展に貢献したいと思う。
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次年度の研究費の使用計画 |
24年度中に共同研究者の藤澤太郎氏(東京電機大学)の元に研究打ち合わせに行く予定であったが、藤澤氏が京都にやってきたので、24年度の助成金が若干残ってしまった。25年度の夏に今度は私が東京電機大学に出張予定である。共同研究者との研究打ち合わせの順番が変わって年度をまたいでしまっただけで、研究の計画に特に変更はない。
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