研究課題/領域番号 |
24684003
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
川北 真之 京都大学, 数理解析研究所, 准教授 (10378961)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 極小対数的食違い係数 / 昇鎖律 / 形式的べき級数環 / 連結性補題 |
研究概要 |
フリップの終止予想の還元先の一つである極小対数的食違い係数の昇鎖律の,McKernanの定式化による最も一般的な形を研究した.非特異多様体上の極小対数的食違い係数に制限することで,de Fernex,Mustata及びKollarが構成した生成極限イデアルを使用した. 極小モデル理論ではしばしば多様体とその上の実因子あるいは実イデアルの組を考える.多様体が非特異のときは実イデアルとの組を考えれば十分である.生成極限イデアルとは,それら実イデアルの族の局所的な極限であり,形式的べき級数環上の実イデアルとして定まる.非特異多様体上の極小対数的食違い係数の昇鎖律は,実イデアルの指数が一定の場合は私が証明している.指数が動くときは,実イデアルの列の生成極限が与える極小対数的食違い係数が元々の殆どの実イデアルが与える係数と一致する予想から従う. しかしながら生成極限イデアルは形式的べき級数環上定義されるため,標数0の双有理幾何の基本定理である小平消滅定理が知られていない.私はその幾何的応用であるShokurov,Kollarの連結性補題を形式的べき級数環上で考え,特別な場合に証明した.さらに3次元の研究を深めて,3次元形式的べき級数環上の対数的標準特異点の最小対数的標準中心の存在と正規性を証明した.これと私の以前の極小対数的食違い係数のイデアル進半連続性の研究を組み合わせて,3次元の生成極限イデアルが与える極小対数的食違い係数が1より大きいとき,上述の予想すなわちそれが元々の殆どの実イデアルの与える係数と一致することを示した.系として,3次元非特異多様体上の極小対数的食違い係数の昇鎖律のMcKernanの定式化が,係数が1より大きい範囲では成り立つことが得られた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
極小対数的食違い係数の昇鎖律との関連を超えて,双有理幾何における重要な幾何的性質であるShokurov,Kollarの連結性補題が,部分的ながら形式的べき級数環上へ拡張されたからである.さらにそれを用いて,極小対数的食違い係数の昇鎖律の最も一般的な形であるMcKernanの定式化が,3次元非特異多様体上の1より大きい係数たちについては証明できたからである.
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今後の研究の推進方策 |
引き続きフリップの終止予想の視点から,LMMPの過程で現れる特異点の有界性問題を研究する.特に極小対数的食違い係数に着目して,非特異とは限らない多様体上の極小対数的食違い係数の昇鎖律への手掛かりをつくる.
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