研究概要 |
今年度は最尤推定復号の有理写像表現の代数構造について研究を進めた. 【成果1】符号の自己同型群を用いた近似最尤推定復号の設計の効率化 有理写像は自己同型群の作用について共役対称性を持つことが証明できる.これにより有理写像をテイラー展開した各次数の多項式についても共役対称性が満たされる.よって各次数に現れる多項式は自己同型群が定める不変式環の元として構成される.一方有限群が定める不変式環を求める高速アルゴリズムは知られており(比較的構成が容易なものとしてはHilbert級数とRaynolds作用素を用いるもの),符号の自己同型群に対して具体的に不変式環を構成することは可能である.これにより近似有理写像の高次非線形項を決定することが可能になり,近似最尤推定復号の設計が可能となった. 【成果2】グレブナー基底を用いた近似最尤推定復号の設計 【成果1】では符号の自己同型群の情報を用いて近似最尤推定復号を設計したが,ここでは巡回符号に限定して,グレブナー基底を用いた設計法を提案した.D. Augotの1996年の結果により,巡回符号の符号語はグレブナー基底を用いて具体的に構成することができる.一方近似最尤推定復号に現れる非線形項は双対符号語から構成される.よってAugotの手法を双対符号に適用することで,具体的に双対符号語を構成でき,これをもちいて近似最尤推定復号が設計できることになる. 【成果3】MacWilliams恒等式による有理写像の特徴付け 最尤推定復号の有理写像表現が一般化MacWilliams恒等式をもちいて記述できることを証明した.これによりテイラー展開近似の一般項が双対符号の情報のみにて構成できることが示された.この成果により双対符号の情報が多く得られる符号については精度の良い復号が設計できることが導かれ,その意味でとても重要な成果である.よってReed-Muller符号やGrassmann符号などの双対符号語の構造が詳細に調べられている符号に適用することで,誤り率の詳細な特性評価が可能になる.
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