研究課題/領域番号 |
24684007
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
平岡 裕章 九州大学, マス・フォア・インダストリ研究所, 准教授 (10432709)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 近似最尤推定復号 / 一般化MacWilliams恒等式Mac |
研究実績の概要 |
今年度の課題であった,最尤推定復号の双対定理の一般化については,MacWilliams恒等式との接点が見つかった.従来のMacWilliams恒等式は,線形符号の重み分布とその線形符号の双対符号の重み分布に対する恒等式として知られている.本研究により,符号ー復号双対定理は,有限体上の多項式環で定まる一般化MacWilliams恒等式として定式化できることが明らかになった.これにより,最初の課題であった,近似最尤推定復号の高次数化については,重みが低い双対符号語からリストアップすることで,原理的には希望の次数まで上げることができることが明らかになった.
一方で,具体的な数値計算を取り込んだ数値実験を行う研究も実施した.ここではBCH符号をモデルとして用い,上記原理により構成可能な近似最尤推定復号の次数と復号パフォーマンスの関係を調べた.現時点で明らかになったことの一つは,次数を上げることで復号パフォーマンスの改善が見られることである.これはあらかじめ予想可能な事実である.一方で,単に次数を上げるだけでは不十分である,幾つかの事例が構成できた.例えば,それぞれの次数は双対符号語の重み対応するが,双対符号語のある重みの符号語を部分的に近似最尤推定復号に入れるより,その重みのすべての双対符号語を入れた方がパフォーマンスが良くなる傾向があるようである.これらの事象については全て数値的な実験にもとずく考察であり,理論的な解析については今後の課題となる.ただ,次数を5次程度まで上げておけば,Berlkamp-Massey復号に比べて格段にパフォーマンスが良くなることは確認できることから,本手法が有効であることは十分に示される.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度の計画では,近似最尤推定復号の高次数化,および具体的なモデルに対する数値計算を実施することによるパフォーマンスの検証を行うことが,主たる目標であった.これらについては,研究実績の概要にまとめたように,順調に実現されている.さらに,当初予想しなかった一般化MacWilliams恒等式との接点は,今後代数的符号理論と確率的符号理論を結びつける可能性がある,非常に重要な発見と認識している.
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今後の研究の推進方策 |
これまで得られた解析結果をまとめ,さらなる新たな方向性を探ること進めていく.具体的には,今年度数値的に大まかに行った解析を,各重みが定める双対符号語の復号における意味合いを,数値的・理論的により詳細な解析を進めていくことで,復号設計の指針を導き出す.また一方で,最終年度にはネットワーク符号の層コホモロジーを用いた解析にも着手する.特に,位相的データ解析やパーシステントホモロジーの概念を用いて,大域的ネットワークフローの特徴づけを行うことや,近似最尤推定復号においても,写像の普遍集合やアトラクティング領域の特徴づけに,パーシステント加群をもちいる解析方法の確立を目指す.
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次年度使用額が生じた理由 |
当初予定していた海外出張2件(アメリカRutgers大学,オーストリア IST Austria)が,来年度に変更になった為.
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次年度使用額の使用計画 |
該当する海外出張2件(アメリカRutgers大学,オーストリア IST Austria)を,来年度に実施することで対応する.
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