研究課題
今年度はこれまで得られた成果の統合を行うとともに、特に今後の挑戦的な課題探索にも取り掛かった。なかでも、近似最尤推定復号の力学系的振る舞いの解析に位相的データ解析を適用する研究を重点的に行った。力学系の不変集合を近似的に特徴付ける方法として、相空間から有限点集合を(例えばランダムに)選び、それらの点列が力学系の流れに従ってどのように動いていくかを調べた。このとき、空間点列を直接扱っては情報量が膨大になることから、なんらかの意味で粗視化する必要があるが、ここにパーシステントホモロジーを適用する方法について検討をおこなった。ここでの問題点は、従来のパーシステントホモロジーでは、空間方向へのフィルトレーションをいれることで解像度を変える操作が可能であるが、この空間解像度の変化と同時に時間方向の遷移を捉える方法論はまだ未開発であることが挙げられる。しかしながら、この設定は2つのAn型quiver(箙)のテンソル積で定義される代数上での表現を考えることに帰着され、そこで定まる表現の直既約分解を一般的に調べる問題は非常に困難であることが知られている。これを踏まえて今年度は、(1)テンソル積代数が有限型になるクラスを特徴づけし、(2)有限型の場合に具体的に直既約分解を構成するアルゴリズムを開発した。これら二つの成果はいずれもAuslander-Reiten理論を用いることで得られた。一方で、一般化パーシステント加群の層コホモロジーを用いた定式化をネットワーク符号へ応用する問題にも取り掛かった。この問題については、まずJustin Curry氏の学位論文や関連する論文の細部を調査することから始めた。特にentrance path圏や余層ホモロジーや層コホモロジーの情報流的意味づけについて考察をおこなった。しかしながら、現時点では新たな成果は得られておらず、今後の展開が期待される。
27年度が最終年度であるため、記入しない。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 3件、 招待講演 4件) 備考 (1件) 学会・シンポジウム開催 (1件)
Discrete and Comput. Geom
巻: 55 ページ: 100-157
10.1007/s00454-015-9746-2
Mathematics for Industry, Spring
巻: 13 ページ: 79-96
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http://www.wpi-aimr.tohoku.ac.jp/hiraoka_labo/