X線CCDの信号処理を高速化するためにASICを開発した。我々が本研究以前に開発したASICが、現在軌道上のひとみ衛星搭載CCDカメラに使用されているが、本研究ではそれを以下の点で発展させたものである。一つはアナログデジタル変換を行うデルタシグマモジュレータ回路を二次から四次に高次化することで、雑音整形性能を向上させた。これにより、ひとみ用ASICよりも少ないサンプリング回数で同等の雑音性能を得ることに成功した。また線形性能については積分非線形性が0.1%と、ひとみ用ASIC(0.2%)と比較して有意に向上している。もう一つは、高次化したADC回路により、信号系統ごとのADCの数を一つにすることが出来ている。ひとみ用ASICでは、1ピクセルあたりの信号処理に時間を要したため、各系統に2つのADCを実装し、それらを交互に動作させていた。これは、一枚の画像の中に異なるゲインを持つピクセルが交互に並ぶことを意味している。これによって最終的な天体画像を得るために後段の煩雑な画像処理を要求していた。本研究のASICでは単一のADCで全てのピクセルを処理することが可能なためゲイン補正が不要であり、ASIC出力を復号化すればすぐに画像が得られるようになった。さらに本研究で開発したASICは、低高度地球周回衛星を模擬した放射線損傷試験を行った。放射線損傷には、陽子による経年劣化を受ける損傷と、重粒子による確率的な損傷の二つがあるが、その両方に対して、十分な放射線耐性を持つことが実証できた。
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