研究課題/領域番号 |
24684011
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研究機関 | 国立天文台 |
研究代表者 |
廣田 朋也 国立天文台, 水沢VLBI観測所, 助教 (10325764)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 電波天文学 / 位置天文学 / 電波干渉計 / 星形成 / 星間分子 / メーザー / VERA / ALMA |
研究概要 |
本研究では、国立天文台の超長基線電波干渉計VERAとアタカマ大型ミリ波サブミリ波干渉計ALMAを用いて、太陽系から最も近い大質量星形成領域オリオンKLにおけるセンチ波~サブミリ波帯の水メーザーを同時観測し、オリオンKLの星形成活動やメーザー励起機構の解明を目指す。2011年から、オリオンKLの22GHz帯水メーザーは通常の1000倍以上に増光するバーストが起こっており、絶好の機会となっている。 2012年度は1カ月に1~2回の頻度でVEIUによる22GHz帯水メーザー観測を行い、6月に15万Jyと今回のバーストで最大光度になったことを確認した。解析中の位置天文情報と合わせ、メーザーバースト時の構造変化、運動を調べることが可能になっている。また、本研究ではVEIUによる大容量データ記録、広帯域・高分解能観測ための新たな記録装置「VDIF-Recorder」を導入し、観測運用に実用化している。 ALMAについては、共同利用観測cycle0が予定より遅れたものの、現在全データの解析を進めている。ー方、本研究ではすでに公開されているAL燃科学評価データを用いて、オリオンKLでは初の振動励起(3500K)高エネルギー水輝線の検出という、当初計画以上の成果も上げている。振動励起水輝線は、SiOメーザーや22GHz水メーザーと同じ速度構造を示し、これらがほぼ同じ領域から放射されていることを示唆している。解析中のcycle0データでも他の振動励起水輝線を検出しており、水分子の励起状態を調べることが可能である。これらの成果を元にしたALMAのcycle1追加観測の提案は高い競争率(4倍以上)にもかかわらず2件採択されている。水メーザー源の運動(VERA)、物理的・化学的性質(ALMA)を総合して、オリオンKLにおけるメーザー励起機構、大質量原始星周りのジェットやガス円盤の解明が期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
VERAの新システム立ち上げ、モニター観測は順調に進んでいる。一方、ALMAについては、観測所が初期運用であることもあり、cycle0共同利用の観測はやや遅れていた。現時点ではcycle0のデータは全て揃っており、解析の準備が整っている。ただし、本研究を元にしたALMA科学評価データによる成果発表、cycle1共同利用における2件の観測提案採択など、当初想定していなかった成果も上がっているため、達成度は(1)とした。
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今後の研究の推進方策 |
2013年度は、VERA、ALMAの観測データ解析を優先的に行う。ALMAについては観測後1年でデータが公開され他の研究者からのアクセスも可能になるため、独占的に使用できる2013年11月までに論文出版を目指す。データ解析完了後、メーザー励起機構の理論的研究を開始する。すでに公開されているAL肌科学評価観測データや新規に採択されたcycle1データも含めて、メーザー励起機構や星形成機構の解明を目指した研究を推進する。
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次年度の研究費の使用計画 |
初年度VERAに導入を計画していたデジタルデータ記録装置について、計画よりも経費をおさえることができたため、次年度の成果発表(学会発表)の旅費に使用する。
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