研究課題
本研究の目的は、非線形光学素子を干渉計型重力波検出器のシグナルリサイクリング共振器の中に組み込むことで、キロヘルツ帯の感度を改善する手法の開発である。現在運転もしくは開発中の第二世代検出器では、干渉計のバンド幅が数百ヘルツにあり、キロヘルツ帯では感度がそれほどよくないことが知られている。一方で、中性子星連星の合体などの物理現象は数キロヘルツで観測されるもので、第二世代検出器では検出が難しいとされている。本研究で開発する手法は、第二世代検出器の一つである、ドイツのGEO-HF検出器をベースに設計されており、導入することで他の第二世代検出器よりよい感度を実現できることが、我々の計算で分かっている。具体的には、非共振に制御された光共振器内でレーザーの輻射圧によって発生する、光バネと呼ばれる見えないバネを利用して、重力波に対する感受率を向上するというもので、非線形光学素子を使うことで光バネの共振周波数をキロヘルツ帯に上げることで、高周波の重力波の観測を可能とするのである。本研究では、東工大のクリーンルーム内に、GEO-HFと類似の干渉計構造を持つプロトタイプ機を製作し、原理検証実験を行った。GEO-HFと比べて2.5万分の1の重量の鏡を振り子に吊るし、1W程度の入射パワーでも輻射圧の効果が見えるように工夫している。平成28年度は、干渉計の制御方法を改良することにより、シグナルリサイクリング共振器の二自由度同時制御に成功し、さらに西オーストラリア大学との共同研究で軽量鏡を吊る特殊な振り子の製作にも成功した。平成28年9月には、GEO-HFの将来計画会議に招待され、もっとも魅力的な計画であると絶賛された。平成28年度で実験系は完成したので、今後は干渉計のチューニングを行い、光バネの観測と、その周波数の上昇を検証する予定である。
28年度が最終年度であるため、記入しない。
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Phys. Lett. A
巻: 380 ページ: 521-524
https://doi.org/10.1016/j.physleta.2015.11.010
Phys. Rev. D
巻: 93 ページ: 082004
https://doi.org/10.1103/PhysRevD.93.082004