研究課題
若手研究(A)
半導体ナノ構造では、電子数の精密制御が可能となるため、電子の電荷のみならずスピンが電気伝導に大きな寄与を示す。この電子スピンの精密制御により、スピン機能素子や量子コンピューティングの実現が期待されていることから、半導体ナノ構造においてスピン偏極生成を行うことは、スピン物性理解のみならずデバイス応用上も重要な基盤技術となる。そこで半導体ナノ構造を用いて、磁界や強磁性体、偏光を全く必要としない、半導体のみによる電気的スピン偏極生成を実現することを目標として研究を推進した。その結果、量子ポイントコンタクトと呼ばれる1次元ナノ細線構造と、電子に対し有効磁界として働くスピン軌道相互作用を組み合わせるアイディアにより、強磁性体や外部磁場を用いずにスピン偏極電流を生成することに成功した(M.Kohda et al., Nature Communications 3, 1082(2012))。さらに有効磁場の空間勾配に起因するスピン依存力によってアップスピンとダウンスピンが空間的に分離することを実証し、半導体におけるシュテルン-ゲルラッハの実験に世界で初めて成功した。ショットノイズ測定によりスピン偏極率の定量評価を行い、スピン偏極を示す伝導度0.5(2e~2/h)において70%のスピン偏極率が得られ、伝導度の低い領域ではさらに高い(80%)スピン偏極率が実現できることを示した。
1: 当初の計画以上に進展している
当初目標としていた、半導体ナノ構造におけるスピン流生成を研究1年目において達成できたことは当初の研究計画以上に進展していると言える。
強磁性体や外部磁場を用いずにスピン偏極電流を生成できたことから、今後はその微視的なメカニズムについてさらに詳細に調べていく予定である。それと同時にスピン生成源として利用できることから、半導体のみを用いた新規スピントロニクスデバイスへと発展させていく。
すべて 2013 2012
すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件) 学会発表 (12件) 産業財産権 (3件) (うち外国 1件)
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