研究課題/領域番号 |
24684019
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
好田 誠 東北大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (00420000)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | スピントロニクス / 半導体 / 2次元電子ガス / 量子ポイントコンタクト |
研究概要 |
本年度はInGaAs/InAlAs2次元電子ガス構造を用いて、量子ポイントコンタクトの低温伝導測定を行い、スピン縮退の解けたG = 0.5×(2e2/h)が安定に観測できる条件を探索した。特にサイドゲート構造に着目し、エッチング深さや溝幅等を系統的に調べることで、効率的に1次元伝導チャネルを形成できる条件を調べた。その結果エッチング深さを深くすることで、パラレルコンダクタンスを抑制し、サイドゲート電圧特性が向上することが明らかになった。その結果、0.5構造が安定に存在するためのデバイス作製指針を得ることができた。 また、本年度はInGaAsナノ狭窄構造を並列に接続することで、磁気フォーカシングを実現した。通常磁気フォーカシングはGaAs2次元電子ガスのような平均自由行程の長い系で行われている。InGaAs2次元電子ガスでは平均自由行程がGaAsのそれよりも短いことから磁気フォーカシングは殆ど調べられていなかった。しかし、磁気フォーカシングは高精度の波数分解測定が実現できることからスピン偏極率を明らかにする手法として有効である。そこでInGaAsナノ狭窄構造を用いて磁気フォーカシングデバイスを作製し、バリスティック伝導に起因した伝導度ピークを観測した。この結果より、今後スピン偏極率を電気伝導から明らかにするための基盤技術が立ち上がったと言える。 さらに、スピン緩和が完全に抑制可能となる永久スピン旋回状態を実現するためにInGaAs/InAlAs2次元電子ガス構造を用いた、弱反局在解析を行った。スピン共鳴トランジスタなどの新規スピントロニクスデバイスが実現可能となるゲート制御による永久スピン旋回状態と逆永久スピン旋回状態の制御を実現し、今後ナノ構造とのくみあわせによる新規スピンデバイスに向けたデバイス構築が可能となる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初計画していたスピン縮退の解けたG = 0.5×(2e2/h)のプラトーも観測し現在スピン偏極率を同定するための、磁気フォーカシング実験にまで進展していることから、本研究は当初の研究計画以上に進展していると言える。これにより、未だ解明されていないスピン偏極の起源を実験的に示すことが可能となるため、2次元電子ガスや半導体メゾスコピック系におけるスピン物性の解明、そしてスピン軌道相互作用に関わるスピン伝導機構の構築を目指すことができる。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、InGaAsをベースとした量子ポイントコンタクトを組み合わせることによりスピン偏極とスピン検出を各量子ポイントコンタクトに担わせ全て伝導測定によりスピン偏極率の同定やスピントランジスタなどへの発展に必要な基板技術を構築していく。同時にスピン編曲の起源であるスピン軌道相互作用に起因するスピン偏極率のバイアス依存性を詳細に調べることで、有効磁場の空間勾配とスピン偏極率の関係を明らかにしていく。
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