研究課題
磁気秩序と強誘電性が共存する磁性誘電体(マルチフェロイックスと呼ぶ)における、トポロジカルな構造であるドメイン壁やスキルミオン(スピンが渦状に巻く構造)の高速動作を目指し、研究を行なった。H25年度は特にスキルミオンを有するマルチフェロイック物質であるCu2OSeO3に着目し、マイクロ波領域における高速電気磁気効果の検出に成功した。マイクロ波の透過率を精密に測定し、スキルミオンが磁気共鳴を起こす際に吸収されるマイクロ波の量がマイクロ波の伝搬方向によって変わるという現象を観測した。これは非相反方向二色性と呼ばれる現象で、マイクロ波領域においては初めての発見である。マルチフェロイック中の構造体を高速で駆動することにより、マイクロ波領域で電気磁気効果が発現することを実証することができたことを受け、マイクロ波整流デバイスや電場印加によって透磁率が変わるインダクタなど、マルチフェロイックスキルミオンを基盤とした応用の可能性が示された。電荷秩序と強誘電性が共存する、広義のマルチフェロイックスも近年同様に注目を浴びている。電荷秩序を示す典型的な物質群の1つに有機導体が挙げられる。H25年度は放射光施設を用いてx線散漫散乱実験を行い、電荷秩序のクラスタを発見した。また、冷却速度依存性を詳細に調べることにより、電荷クラスタグラスともいうべき状態が発現していることを見出した。電荷が不均一に凍結した状態は、広義のマルチフェロイック物質として新たな状態である。また、電荷ガラスが低温において形成される過程は、過冷却液体がガラス化する際の過程に非常によく類似していたことから、今後ソフトマターのガラス分野も巻き込んだ学際的な分野へと発展してくことが期待される。
25年度が最終年度であるため、記入しない。
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