研究課題/領域番号 |
24684021
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研究種目 |
若手研究(A)
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研究機関 | 独立行政法人理化学研究所 |
研究代表者 |
川村 稔 独立行政法人理化学研究所, 河野低温物理研究室, 専任研究員 (60391926)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 量子ドット / 動的核スピン偏極 / 近藤効果 |
研究概要 |
本研究では、(i)半導体量子ドットにおける抵抗検出型核磁気共鳴法の開発、および(ii)それを利用した量子ドット近藤効果状態における電子スピン計測を目的としている。単一量子ドットのような御小体積の試料からの核磁気共鳴信号を得るには、量子ドット中の核スピンを動的に偏極する必要がある。今年度は、量子ドットにおける核スピン偏極メカニズムに関する理解を深めるために実験をおこない、熱浴との結合の強い半導体量子ドットの磁場中非平衡状態において核スピンが動的に偏極することを明らかにした。熱浴との結合が強い量子ドットでは、微分コンダクタンスのバイアス電圧依存性に近藤効果にともなうピークがあらわれ、このピークは磁場を印加すると2つに分裂することが知られている。ピーク間電圧は磁場の大きさに敏感であるため、量子ドット中の核スピンが作る有効磁場をピーク間電圧の変化として検出することができる。この効果を利用して、核スピン偏極が生じる電圧および電子数を調べた結果、ゼーマンエネルギーよりも大きなバイアス電圧を印加したときに赴こる同時トンネリング過程によって、核スピンが偏極することが明らかになった。さらに、核スピンを十分に偏極させた後、量子ドットにラジオ波を照射することで、量子ドットの構成元素である砒素およびガリウムの核磁気共鳴信号を微分コンダクタンス測定によって得ることに成功した。これらの成果は、単一量子ドットにおける核スピン制御技術を確立し、核磁気共鳴法による量子ドット中のスピン状態の研究を可能にするものである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
量子ドットの磁場中非平衡状態において核スピンが動的に偏極することが明らかになった。この結果は予想外のものであったが、動的核スピン偏極を利用することで量子ドット内の核スピン偏極が感度良く検出でき、当初の計画よりも早く研究を進めることができた。
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今後の研究の推進方策 |
動的核スピン偏極を用いて、量子ドット中の核スピンのエネルギー緩和時間・位相緩和時間の測定をおこなう。 核スピン偏極を量子ポイントコンタクトの0.7コンダクタンス問題へ応用し、0.7コンダクタンス状態における電子スピンダイナミクス解明へと展開する。
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次年度の研究費の使用計画 |
今年度予算で導入した装置の立ち上げが計画よりも遅れたため、当該装置の周辺機器整備に充てる予定だった予算の一部を次年度に使用する。次年度は、超伝導磁石および高精度前置電流増幅器を購入し、今年度予算で購入した無冷媒冷凍機と組み合わせて、メソスコピック系のスピン計測に特化した測定システムを構築する。
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