研究課題/領域番号 |
24684023
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
下谷 秀和 東北大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (60418613)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 電気二重層トランジスタ / カーボンナノチューブ |
研究概要 |
本研究では電解液として用いるイオン液体と固体の界面に形成される電気二重層を利用した物性および機能の発現の研究を行った。電気二重層は固液界面に形成されるイオンの電荷層とそれによって固体表面に誘起される反対符号の電荷層からなり、分子スケールの厚さのキャパシタとみなすことができる。このキャパシタに対して数Vの電圧を印可することができるため、数十MV/cmもの電場が固体表面に印可されることになる。これにより、固体表面の電子状態を大きく変化させることができる。 今年度報告した主な成果として、従来は電場に対して大きな抵抗変化を見せなかった金属的な単層カーボンナノチューブの電気電気伝導度を約六倍の大きさに変化させることができた。単層カーボンナノチューブは一次元的なバンド構造をしているため、電気伝導度はキャリアを輸送するサブバンドの数に比例して変化すると考えられている。しかし、従来の電場印可方法ではサブバンド数が変わるほど電荷を蓄積することができず、電場に対して電気抵抗はほぼ一定であった。今回、電気二重層トランジスタ構造を用いることにより金属的な単層カーボンナノチューブでもキャリアを輸送するサブバンド数を変えることができた。この実験は金属的な単層カーボンナノチューブの薄膜を用いて行ったため、電気抵抗と紫外―可視―近赤外吸収スペクトルの同時測定により電気抵抗変化とサブバンドフィリングの変化が同時に起こることを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的である、電界効果による電荷蓄積を利用した物性・機能発現の面で大きな進歩が見られた。また、同一物質で電子と正孔の両方の伝導を実現することができ、発光デバイスへの応用に問題が無いことを明らかにした。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は電気二重層トランジスタの手法を有機単結晶に応用し、固体絶縁体を用いた従来型の電界効果トランジスタよりも蓄積電荷密度の高い両極性トランジスタを実現する。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度の使用額は計画通りだったが、前年の平成24年度からの繰り越しがあったため。 研究の進展により平成25年度に購入したイオンミリング装置を不活性雰囲気中で使用する必要が生じたため、平成26年度にグローブボックスを購入する。
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