研究概要 |
本研究では今までに報告がない重い電子系/絶縁体の人工超格子の作製を目指すものである.申請者はそのターゲットとして重い電子化合物CeB_6と,同じ結晶構造を持つ近藤絶縁体SmB_6を選んだ.研究プロジェクトの初年度である平成24年度は成膜装置の立ち上げとCeB_6およびSmB_6のエピタキシャル膜の成膜法を模索した.成膜は分子線エピタキシー法を用いることとし,装置の立ち上げを行った.最終的に成膜時の真空度10^<-7>Pa台,蒸着速度1~2A/minでの安定した蒸着を行える性能を得ることに成功した.これには他に類を見ない,高温Kセルによる安定的なBの蒸着法を確立できたことが大きい.高融点低蒸気圧のBに対しては通常は電子ビーム蒸着が用いられ,Kセルによる加熱蒸着の例は少ない.しかしながら本研究で目指すような超高真空下での極めて低い蒸着レートでの安定した蒸着にはKセルによる穏やかで安定してる蒸着方法が有利である.そこで申請者は1900℃程度まで昇温できる高温Kセルを組み合わせて,昇華による蒸着法を確立した.これにより,前述のような低い蒸着レートでも再現性良く,安定した成膜を行うことに成功した.このようなた立ち上げに成功した装置を用いて,CeB_6およびSmB_6の薄膜作成を行い,c軸配向膜を得ることに成功した.c軸配向性は表面での反射高速電子線回折で観測されたパターンとX線回折により確かめられた.また,電気抵抗測定からCeB_6が近藤効果を示すこと,SmB6が絶縁体的なふるまいを示すことを確認し,得られたc軸配向膜でもバルク単結晶の性質を再現できていることが確認できた.
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