研究課題
製膜時の基板温度を1000℃まで昇温できるよう基板ヒータの改造を行った.MB6薄膜の成膜に用いる基板にはMgO (100)を用いている.MgO基板を1000℃にて12~24時間アニールすることにより,基板表面の原子を再配列させ,より平坦な平面を得ることに成功した.またSmB6薄膜の蒸着時の基板温度を1000℃にすることと合わせて,c軸方向だけではなく面内の配向性を持った膜を得ることに成功した.しかしながら面内で未配向な成分も残留しており,膜質の一層の改善が求められる.同様の手法で同じ結晶構造を持つSrB6薄膜の成膜にも成功した.SrB6薄膜に関しても同様にc軸には完全に配向しているが,面内に配向した成分と未配向成分を同時に持った膜が得られた.SrをBに対して化学量論比より10%程度以上多めに蒸着すると面内配向しなくなることが明らかになった.SrとBの比を化学量論比通りに蒸着した膜では電気抵抗率の温度依存性は低温で急激に増大し,絶縁体的な振る舞いを示すが,Srを増やすと低温における抵抗の増大が急激に抑えられることが明らかになった.過去の文献ではSrB6はバンド絶縁体か半金属化について議論なされてきた.本研究からSrB6はバンド絶縁体であるがSrのドープにより半金属的な振る舞いを示していると考えられる.
2: おおむね順調に進展している
c軸配向性だけではなく面内配向性を持った製膜を行う手法を確立しつつある.また同じ結晶構造をもつSrB6の成膜手法を確立し,かつSrB6がバンド絶縁体であることを明らかにした.これによりCeB6/SrB6やSmB6/SrB6の人工超格子を製膜し,重い電子系/絶縁体あるいはトポロジカル絶縁体/バンド絶縁体人工超格子の成膜を行う準備を整えた.
製膜条件を改善し,面内未配向成分を減らす.またCeB6/SrB6やSmB6/SrB6の人工超格子を製膜し,CeB6層(重い電子層)を薄くしていき,重い電子の2次元閉じ込めによる電子状態の変化について,電気抵抗率測定などから明らかにする.トポロジカル絶縁体層の厚みを薄くしていき,界面金属状態間の混成が起きるようになれば絶縁的に振る舞うことが知られている.SmB6層を薄くしていき,絶縁体的な振る舞いが表れればトポロジカル絶縁体であることの証明となる.SmB6層の厚みの異なる人工超格子についてそれぞれの電気抵抗率を測定し,薄い極限で絶縁的になるかどうかについて明らかにする.
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すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 6件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (25件) (うち招待講演 1件)
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