研究実績の概要 |
本研究では、以下の2つの観点から共有結合性ネットワークを有する化合物に着目した新規超伝導物質探索を行った。 ① 共有結合性ネットワークの次元性・伝導性と高温超伝導 本研究の新物質探索において発見したYRe4Si2 (Tc=3.2K)は、フェルミレベル近傍ではReによる部分状態密度の寄与が大きい。そこで、磁性と超伝導の共存・競合などの物性制御を期待し、Yサイトへ4f電子をもった同価数である希土類元素の置換を試みたところ、GdRe4Si2を目的組成として合成した試料内には複数の不純物相が確認されるが、磁化率の評価から約8Kで反強磁性転移、約3Kで超伝導転移を観測した。不純物相や周辺物質において同様の転移は報告されていないことから、GdRe4Si2が新しい磁性超伝導体であることを示唆する結果であるといえる。更に、Ru-Si蜂の巣型格子を有するLaRu3Si2 (Tc~7K)に着目し、Laサイトへの他元素(3価元素Lu, Sc 2価元素Ca, Sr)置換によって、その次元性・伝導性の制御を試みた。3価元素置換では蜂の巣型格子の層間距離であるc軸長が長くなって3次元的な電子相関の効果が低下によってTcが抑制されたが、2価元素のCa置換では、ホールドープによるフェルミ準位近傍の状態密度が上昇したため約8KまでTcの上昇が見られた。 ② 共有結合性ワイドバンドギャップ半導体の高温超伝導化 超伝導転移(Tc=2.8K)を示すAlN試料は試料内での不均一性が大きく窒素供給源の選択が難しいため、窒素量の制御と均質超伝導相の合成を両立する合成手法として、不活性ガス(Ar, N2)封管した金属管中における固相反応法を用いた合成を行った。試料中に不純物が少量合成されるが、磁化率評価から弱いながらも超伝導転移を確認し、この手法によっても超伝導相を得られることを見出した。
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