研究実績の概要 |
レアメタルフリー磁性材料L10-FeNiは高い磁気機能を有し、なおかつ希少金属を用いないことから、次世代自動車用のモーター材料として高い注目が集まっている。平成27年度は、Pulse laser deposition(PLD)装置の整備を行い、蒸着レートの高精度化を行った。 PLDは、レーザーアブレーションにより任意のターゲット元素をプラズマ化し、薄膜を蒸着する手法である。PLDはMolecular beam epitaxy(MBE)に比べて、瞬間的な堆積率が大きいため、界面の粗さが小さいという利点がある。さらに、レーザーパワー制御により成膜速度の調整が可能である。その一方で、これまでレーザーパワーの不安定性により、蒸着レートが安定しない等の技術課題が残されていた。 そこで本年度は、蒸着レートの安定化及び校正直線の決定を行い、PLDを安定稼働状態に導いた。 Cu(001)単結晶基板を、イオン銃を用いて表面スパッタし、600℃で10分間過熱することで清浄表面を作成した。清浄表面はRHEEDにより確認している。その後、CoのPLD蒸着を行い、RHEED振動を計測することで、蒸着レートを算出した。測定した蒸着レートは少なくとも54%程度の不安定性があったが、蒸着レートを様々なレーザーパワーで系統調査することで、蒸着レートとレーザーパワーの校正直線を決定した。その結果、不安定性を8%程度まで抑えることに成功した。同様の測定をFe,Cuについても行い、元素の蒸着レートとレーザーパワーの校正直線を決定した。今後は安定電源を導入し、蒸着レートの更なる安定化を図る予定である。
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