研究実績の概要 |
本研究の目的は、超伝導共振器中で大幅に増強されたマイクロ波を用いて、低温分子ビームを集束・減速し、高指向性・低速の低温分子ビームを実現し、低温分子ビームを用いる高エネルギー物理学の精密測定に寄与することである。今年度では、ヘリウムバッファーガス冷却による低温PbO分子ビームについて、差動排気系や吸着ポンプ系の改良を引き続き行い、ビーム源から40 cm離れた位置でも十分な量のPbO分子が検出できるようになった。 また、低分散ミラーと超低膨張率ガラススペーサーのエタロンによる、MHz精度の高精度レーザー周波数測定計を完成させた。これを用いて400-420 nm帯のCa,Rb,In,K,Ga,Ybの各原子種の主要な共鳴線の絶対周波数を測定した。測定はヘリウムバッファーガス冷却による低温原子ビームを用いた分光と、蒸気セルによる飽和吸収分光で行った。これらの共鳴線の多くはこれまでに数百MHzの精度でしか測定されていなかったが、我々はこれらを周波数比としては数MHzの精度、絶対周波数としては数MHz~数十MHzの精度で測定した。この結果は論文にまとめられ、Appl. Phys. B誌への掲載が決まった。PbO分子のX→B電子状態間の遷移についても同様な測定を行っており、3種類の同位体について約40本の共鳴線を高分解能で測定した。また、レーザーの周波数をこのエタロンに対して安定化させることで、ドップラー幅の小さいPbO分子ビームについても安定した検出が可能になった。
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