研究課題/領域番号 |
24684032
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研究種目 |
若手研究(A)
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
千葉 文野 慶應義塾大学, 理工学部, 助教 (20424195)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 高分子・液晶 / 高圧力 / X線回折 / 液体液体転移 / 化学物理 / ソフトマター / 構造解析 / 圧力誘起相転移 |
研究概要 |
平成24年度は、主として装置の設計、製作および調整を行った。X線回折用高圧セルと、試料作製のためのタングステンカーバイド製の部品を製作した。まだ装置全体が調整段階にあるので、SPring-8へのビームタイム申請は行っていない。装置が精密で、組み立ては可能ではあるが公差の小さい部品を組み合わせる部分の組み立てに時間を要することが分かり、この作業を軽減するための簡単な装置を別途開発することとなったため、本実験の日程は遅らせることとなった。また、溶融状態の高分子を急冷するための装置を作成し、我々の扱っている結晶性高分子isotactic poly-4-methy1-penten-1(P4MP1)をガラス化することに成功した。同一のホモポリマーによる、構造の異なるガラスの作成へ向けて順調に進んでいるといえる。 6月から9月にかけ、英国のラザフォード・アップルトン研究所に滞在する機会を得た。高分子を用いた水素吸蔵材料を開発している研究者(Prof.Steve Bennington)より、本研究の水素吸蔵材料への発展性を学ぶ機会があった。特に錠剤状の吸蔵体を作成する際に、数kbar程度の高圧力を用いることによって、特性を大きく制御できることを発見した。これについては25年4月現在、特許取得に向けて研究を進めている。 P4MP1の溶融体の構造の変化は、回折実験においては0.6A-1付近のピークの変化として観察されるが、これが単体のヒ素などの圧力誘起構造変化にともなうプレピークの変化と対応していることを提唱し、更に液体液体転移のオーダーパラメータとしての役割を果たしうる可能性について、24年度に執筆した解説の中で言及した。順番が逆ではあるが、同内容の論文を現在執筆中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
長期的視点に立つと、海外に滞在し、活発な研究グループにおいて集中的に研究する機会は大変貴重である。2012年6月より9月にかけて、英国のラザフォード・アップルトン研究所にて研究する機会に恵まれた。滞在は大変有意義で、今後、本研究(若手A当該研究)について、応用や起業を視野にいれた基礎研究が可能であるという確信を得ることができた。しかし海外に滞在していたため、国内における実験準備には遅れが生じた。
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今後の研究の推進方策 |
計画通り、高分子溶融体の高圧下における構造解析を行う。計画に加えて、水素吸蔵材料への発展性についても調べる予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
実験準備が全体に3か月ほど遅れているため、主として高圧ガス配管の消耗品15万円の購入を翌年度に行うこととした。翌年度の前半にこれを購入して計画通り進める。
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