研究課題/領域番号 |
24684033
|
研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
木村 勇気 東北大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (50449542)
|
研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
キーワード | 結晶成長 / ナノ粒子 / 宇宙ダスト / 干渉法 / 核生成 |
研究概要 |
高温のガスが冷える過程で形成する宇宙固体微粒子(宇宙ダスト)は、惑星の材料であり、宇宙で分子や有機物が生成する下地となり、エネルギー収支を担っていることから非常に重要である。惑星系の形成過程に伴う物質進化過程の解明という地球惑星科学の第一級の課題に対して、宇宙ダストの核生成や結晶化過程を実験的に解明することを目的に、二波長干渉計を用いた“その場”観察実験と透過電子顕微鏡を組み合わせてナノ粒子の核生成温度(過冷却度)、吸着係数や表面エネルギーなどの物理パラメーター、融合成長などの定量化を行った。 2012年12月にS-520観測ロケットを用いた微小重力中で宇宙ダストの再現実験をJAXAとの共同研究で行った。これに対して、25年度は対照となる地上実験を行い、微小重力実験との比較検討を行った。その結果、微小重力実験では地上実験よりも遥かに大きな過飽和環境下で核生成したことが分かった。ここで古典的核生成理論と半現象論モデルを用いて、実験における鉄蒸気の冷却のタイムスケールと凝縮温度から吸着係数や表面自由エネルギーの評価を行った。鉄を用いた核生成実験では付着確率は0.01%であったのに対して、地上実験では2桁以上大きな値を取ることが分かった。微小重力実験の値は、従来言われていた値100%に対して4桁も小さい。この物理パラメータは、宇宙ダストの核生成を議論するうえで最も大きな不定性を与えている。また、表面自由エネルギーに対する付着確率の依存性は小さかった。今回、宇宙に存在している鉄ダストの生成過程を明らかにできるデータが得られた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成25年度の実施計画として立てた、融合成長率の見積もり、その場観察実験、ロケットを用いた微小重力実験の対照実験の実施、核生成-水質変質実験とも計画通りに行えたため。
|
今後の研究の推進方策 |
今後は宇宙で粒子が生成する際の雰囲気(H2, H2O, COなど)下で、ナノ粒子の成長過程を解明する。その際、ナノ領域における拡散速度の増大によるナノ粒子中へのガス分子の拡散現象が、成長や欠陥形成、組成分布などに与える影響も含めて明らかにする。また、天体スペクトル観測と比較を行う。赤外の吸収バンドは粒子の形態により変化する。すばる望遠鏡などを用いた天体観測と、実験室の値を比較し、宇宙での過飽和度を決定する試みを行う。
|
次年度の研究費の使用計画 |
実験はトラブルなく計画通り進み、成果を順調に得られたため、ほぼ予定通りに使用できた。実験方法を工夫することができ、当初計画よりも消耗品を効率よく使用できたため次年度使用額が生じた。 北海道大学に異動になったことから、当初の予定以上に必要となる旅費として使用する計画である。
|