研究課題/領域番号 |
24684034
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研究種目 |
若手研究(A)
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
潮見 幸江 京都大学, 理学研究科, 研究員 (60584266)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 重力勾配 / 火山 / レーザ干渉計 |
研究概要 |
噴火の予測精度を向上するには、火山活動の原因であるマグマや火山流体の挙動を定量的に把握することが必要である。現在マグマや火山流体の移動に伴う地下密度変化をとらえる手法としては重力測定が主流であるが、本研究では東京大学宇宙線研究所で開発されたレーザ干渉計自由落下型重力鉛直勾配計を火山地域で利用できるように改良し測定を行うことで、マグマや火山流体の移動に伴う地下密度変化をこれまで以上の高精度で捉えることを目指す。 レーザ干渉計自由落下型重力鉛直勾配計は平成21年度より東京大学宇宙線研究所で開始され、数μGal/mの分解能をもつことが確認された。この重力勾配計を実際の火山測定に利用するために必要となる改良点を把握するため、平成24年7月に重力勾配計を阿蘇にある京都大学火山研究センターに移設して試運転を行った。その結果、長期連続測定の妨げとなる要因としては、投げ上げ回数に伴い増大する電磁気的なノイズが観測された。これは落下体が着地時に摩擦によって帯電することに起因すると考えられる。帯電対策としては落下体に金属皮膜をつけることが有効であることがわかった。測定作業に関しては、光学系の調整を行うためにはクレーンを利用して真空容器から干渉計腕部を取出す必要があったが、火山研究センターにはクレーンがないという問題があった。そこで干渉計腕部を取り出すことなく真空状態のままで調整が行えるように光学系の改良を行った。その結果、クレーンなど実験設備のない環境でも光学系の調整が可能となった。火山環境対策としては、火山灰が観測所内に蓄積し連続運転の妨げとなる可能性があるため光学系を保護する軽量暗箱を設計・製作した。これらの改良の結果、1週間程度かかっていた測定前の調整作業が30分程度で終了し測定値のドリフトは大幅に削減され、再調整を行うことなく1か月以上安定した連続無人データ取得が可能となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では重力勾配計の火山地域における初の実地測定と可搬化に向けた開発を行うことが主な目的である。初年度である本年度には装置を火山地域に移設して試運転を行い実地測定に必要となる改良を行うのが主たる計画であったが、おおむね予定通り計画を実行したため。
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今後の研究の推進方策 |
現在は測定回数を必要最低限にすることで重力勾配計の落下体の摩耗を最小限にとどめているが長期連続観測に耐えうるよう根本的な解決策を探る。また落下体の重心の位置を実測し回転に伴う加速度誤差を評価し、相対重力計との同時測定を行うことで装置の性能評価を行う必要がある。
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次年度の研究費の使用計画 |
本年度未使用額を使用して落下体の摩耗対策と装置の性能評価を行い、これまでに明らかとなった実地測定に必要となる改良点をもとに次年度の予算で可搬型の重力勾配計の設計と製作にあたる。
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