火山噴火の予測精度を向上するためには、火山地域地下における火山性流体の挙動や物質分布の変動を定量的に把握することが求められる。重力勾配観測は地下の物質分布の変動を捉える手法として有効であることが古くから知られており、1970年代より軍事目的で機密に開発された米国のロッキードマーチン重力勾配計などが知られている。火山観測にも有用であると考えられているが、従来の装置は大型のものが多く火山観測所などの実地で利用できる重力勾配計はこれまで実用化されていない。桜島火山では地下構造探査のため1960年代から80年代にかけてばね型重力計を用いた重力鉛直勾配観測が行われていたが、約1年ごとに梯車を用いて異なる高度の相対重力値を測定する手法であり、より短期的な時間変動を連続的に観測することの重要性が指摘されていた。本研究では、火山地域の実地において連続観測に利用できる重力勾配計を開発することを目標としている。本重力勾配計の主な特徴は干渉計型であるため高分解能でドリフトの少ない観測が可能である点と可搬型である点である。 平成24年度より阿蘇の京都大学火山研究センターにて開発を実施しノイズ評価と改良を重ね、平成26年度には京都大学防災研究所桜島火山観測所に装置を移設して実地適用試験を行った。本年度はその結果をもとにより利便性の高い小型装置の設計と製作に取り組んだ。また装置を京都大学生存圏研究所に移設して環境計測分野への応用について検討を行った。
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