研究課題/領域番号 |
24684038
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
舘野 繁彦 東京工業大学, 理工学研究科, 助教 (30572903)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 高温高圧実験 / 地球中心核 / ダイヤモンドアンビルセル |
研究概要 |
レーザー加熱ダイアモンドアンビルセルを用いた高温高圧実験により、高圧下における鉄の融点を決定する。地球中心の温度とその熱進化を議論する。本年度は純鉄についての高温高圧実験を40GPaから220GPa(地球外核相当)まで圧力範囲において15回の高温高圧実験を行った。レーザー加熱のための断熱材として単結晶サファイアおよび粉末Al2O3を用いた。実験は大型放射光施設SPring-8で行い、高温高圧下におけるその場X線回折測定を行った。先行研究で提案されている鉄の融解曲線付近の温度条件で実験を行ったが、提案されている融点以上であっても液体からのX線回折(散漫散乱)を得ることはできなかった。一方これら試料のうち脱圧開放した2試料(54GPa,3000Kおよび210GPa,4600Kから急冷回収)について東京工業大学設置の収束イオンビーム装置(FIB)を用いて試料を加工し、その断面(加圧軸およびレーザー加熱軸と同軸方向)を露出させた。FIBに装備された電界放出型走査型電子顕微鏡による観察を行った。得られた試料断面組織について下記のような特徴が得られた。(1)加熱領域に対応する範囲、およびそれより低温部に顕著なチャネリングコントラスト(金属組織の結晶粒界)の違い。前者は粗粒、後者には細粒な鉄が観察される。(2)断熱材であるAl2O3粉末の粒間に鉄の浸透の有無。以上の観察事実は、それぞれ「粗粒な鉄はレーザー加熱により高温を被り、粒成長したもの」であり、「浸透する鉄は、その組織から高温下では溶融していた」と考えられる。以上の観察結果から、加熱領域が特定と融解の有無が判別できることが分かった。すなわち、X線回折で液体からの散漫散乱を確認されていない試料についても融解を確認できた。このことから、先行研究で用いられている散漫散乱の出現を融解判定とする場合、融点が大評価されている可能性が高い。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題における新規性は、高圧実験に基づく融点測定における融解判定方法の改善にあった。本年度は放射光X線を用いた高温高圧下におけるその場観察に加え、実験回収試料の化学分析を行った。実験回収試料中に、融解に特徴的な組織を観察することができた。アルミナ断熱層に溶融した鉄の浸透の有無が融解判定として有用であることが分かり、これを新しい融解の判定基準として提案できる。引き続きこの手法を以て、実験をすすめることができる。
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今後の研究の推進方策 |
本年度までに溶融の判定基準を確立できた。次年度は、25年度までに行った実験の回収試料のうち、化学分析を行っていない13試料について、引き続き分析を行う。また200GPaを越える圧力領域における実験回収試料は、組織が極めて微細であるため、走査型電子顕微鏡観察に加えて透過型電子顕微鏡(TEM)による分析が有用である。今後のより高圧下における実験回収試料の分析に備えて、TEM分析の技術習得を行う。また、地球の核には不純物としての軽元素(H, O, C, Si, Sなど)が含まれる。これらの効果を調べるため、鉄-軽元素合金の融解実験にも着手する。
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次年度の研究費の使用計画 |
実体顕微鏡取得に際し、当初250万程度を予定していたが、入札により予定額より大幅に低価格で購入できたため。 次年度分と合わせた効率的な使用。実験消耗品など。
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