研究概要 |
チタンサファイヤ再生増幅器からの出力光(10ofs,790nm,1kHz)をビームスプリッターでわけ、一方をサファイヤ板に入射し白色光(種光)に、他方を2次の非線形結晶(β-BBO,厚さ:0.5mm)に入射し第2高調波(励起光)にした。時間的な媒質分散をチャープ鏡対を用いて補償した白色光と励起光とを非共直線角で非線形結晶(Type I BBO,厚さ:1mmカット角:31°)に入射し、広いスペクトル領域で位相整合条件を満たすことにより、可視光領域の広帯域において種光のエネルギーを増幅した。また、エネルギー増幅された種光のパルス幅を測定するために、ポンプ・プローブシステムを構築した。非線形結晶(Type I BBO,厚さ:0.01mmカット角:40.47°)を用いて、ポンプ光とプローブ光の和周波を発生させ、光電子増倍管で検出することで、オートコリレーションによりパルス幅を測定できるようにした。今後、デフォーマブルミラーを用いた制御を行うことで、5-fsに圧縮する予定である。 クライゼン転位反応を利用して、可視5-fsパルス光を照射による反応の強度依存性を調べたところ、ポンプ光のパワーが150nJ以上では反応が進行しないことが明らかになった。 フロー反応の検討としては、ナノ秒レーザーとフローセルを組み合わせることで、オレフィンの光[2+2]反応において、選択性及び収率の向上を目指した。その結果、流速や濃度だけでなく、セルの形状が選択性と収率に影響を及ぼすことがわかった。今回、特注したセルを、振動励起反応においても使用する予定である。 さらに予備的な検討として、様々な保護基を有する置換グルコピラノシドに、現状の可視超短パルス光を照射することで、脱保護反応を試みた。その結果、ナノ秒レーザー照射(266nm)による光反応とも、加熱による熱反応とも異なる生成物が得られた。このことから、光反応とも熱反応とも異なる第3の反応の存在が示唆された。
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