研究課題/領域番号 |
24685005
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研究機関 | 神奈川大学 |
研究代表者 |
岩倉 いずみ 神奈川大学, 工学部, 助教 (40517083)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | フェムト秒レーザー / 極限的超短パルス光 / 振動励起 |
研究概要 |
昨年度構築した、非共直線光パラメトリック増幅器を用いた可視極限的超短パルスレーザー光発生装置に、デフォーマブルミラーを用いた制御系を増設し、パルス幅を圧縮した。この可視極限的超短パルスレーザー光を用いて、“第3の反応”開発を試みた。 昨年度、チオフェニル基・ベンゾキシ基・カルバモイル基を保護基として持つ置換グルコピラノシドの弱酸性メタノール溶液に、極限的超短レーザーパルス光を照射すると、ナノ秒パルスレーザー光を用いた光反応(266 nm, 355 nm, 532 nm)とも 加熱還流による熱反応とも異なる生成物が得られることを見いだした。今年度は生成物の同定を行うと共に、レーザー光強度依存性を検討した。その結果、レーザー光強度400 GW/cm2程度で照射した場合には保護基の脱保護反応が進行した。反応前後のNMRスペクトル解析から、ベンゾキシ基・カルバモイル基の脱保護が示唆された。一方、レーザー光強度300 GW/cm2程度で照射すると、レーザー光路上で単結晶が生成した。この単結晶のNMRスペクトルおよびMASSスペクトルを測定し、解析したところ、新規化合物である環状トリアセタール体が生成したと考えられる。 そこで、環状トリアセタール体の生成条件を更に検討した。その結果、酸濃度が高くなると、生成した環状トリアセタール体の分解反応も進行してしまうこと、また、置換グルコピラノシド濃度が高くなると、糖の再結晶が進行してしまうため、環状トリアセタール体の生成効率が低下してしまうこと等が明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画どおり、デフォーマブルミラーを用いた制御系を増設した。 また、弱酸性メタノール溶液中での置換グルコピラノシドの脱保護反応の反応条件を検討したところ、レーザー光強度を弱くすると、当初の予想とは異なり、脱保護反応ではなく、新規環状トリアセタール体生成反応が進行することを見いだした。可視極限的超短パルスレーザー光を照射することで、通常の光反応や熱反応では生成が確認できていない新規化合物が得られたため、当初の研究計画を変更し、新規環状トリアセタール体生成反応の詳細な反応条件を検討し、特許出願等を行った。そのため、任意の分子振動を選択的に励起する手法の開発が遅れてしまったが、可視極限的超短パルスレーザー光を照射することで”第3の反応”が開発できている可能性は高く、おおむね順調に進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
可視極限的超短パルスレーザー光を照射による環状トリアセタール体生成過程および糖の脱保護過程の反応機構を明らかにする。また、選択的な振動励起の手法としては、2つのパルス光のエネルギー差(波長差)を利用する手法や、2つのパルス光の位相差を利用する方法を試みる。 レーザーシステムは、ポインティングスタビライザーを導入することで、安定性を高める予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
既存のフェムト秒レーザーをレーザーダイオードの平均寿命よりも倍以上長く使用しているため、交換用レーザーダイオードの予算を計上していた。しかし、現在レーザーダイオードが使用可能なため予算を繰越した。 レーザーダイオードが劣化したら、交換する予定である。
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