昨年度までに、チオフェニル基、ベンゾキシ基、カルバモイル基、3種類の保護基を有する糖の弱酸性メタノール溶液に、極限的超短パルスレーザー光を単位面積あたり300 GW程度で照射すると、新規化合物である環状トリアセタール体が生成すること、酸濃度と糖濃度が重要であることを見いだした。本年度は、更なる条件検討を行ったところ、メタノール溶液作成時の温度とレーザー光のパルス幅も重要であることが示された。さらに、種々の糖を検討したところベンゾキシ基が必須であることも示された。これらの結果から、まず、糖をメタノールに溶解することで、メタノールが糖に配位することが重要であると考えられる。そこに、極限的超短パルスレーザー光を照射すると、最初にベンゾキシ基の分子振動がコヒーレントに励起され、次に糖に配位したメタノールにエネルギーが移動し、最終的に重合することで、環状トリアセタール体が生成していると考察した。この環状トリアセタール体の結晶は、極めて微細な針状結晶であり、研究室系のX線装置では測定不可能であったため、放射光施設(Spring-8)でX線回折データを測定し、現在構造解析を試みている。 一方、溶媒をメタノールからエタノールに変更して、同様の実験を行ったところ、この場合にもアセタール体の生成が示唆された。
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