研究課題/領域番号 |
24685006
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
鷹谷 絢 東京工業大学, 理工学研究科, 准教授 (60401535)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 合成化学 |
研究実績の概要 |
前年度までに,ケイ素以外の高周期14族元素を持つピンサー型錯体の合成と,その反応性に関する基礎的知見を得ることに成功した。これを踏まえ今年度は,ゲルマニウムを配位子とするPGeP-ピンサー型パラジウム錯体を触媒として利用した触媒反応開発について,積極的に検討した。その結果,PGeP-パラジウム錯体を触媒として用い,ギ酸アンモニウムをギ酸塩として用いることで,アレンのヒドロカルボキシル化反応がアルゴン雰囲気下で円滑に進行することを見出した。本反応は,等モル量のギ酸塩が水素源かつ二酸化炭素源として機能し,余分な二酸化炭素も金属還元剤も一切必要としない,超効率的なカルボキシル化反応である。従来のPSiP-ピンサー型配位子を用いると,その触媒活性は低く,得られるカルボキシル化体は低収率にとどまった。すなわち,高周期14族元素配位子をケイ素からゲルマニウムへと変えることで,新たな分子変換反応を実現することに成功した。ギ酸は通常,還元反応における水素(又はヒドリド)源として用いられ,同時に放出される二酸化炭素は,その低反応性故無害な共生成物であった。一方本反応は,ゲルマニウム配位子を活用することでそれを炭素源として再利用可能にしたものであり,従来の常識を覆す新しい二酸化炭素固定化反応として極めて有望である。これらの知見は,本研究課題の目的である高周期14族元素配位子の反応性と有用性を明らかにし,新たな触媒設計の指針を示すものとして極めて有意義なものである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
前年度までの知見をさらに発展させ,ケイ素以外の高周期14族元素配位子を活用した,有用な触媒反応開発に成功したため。これらの知見は,高周期14族元素配位子という新たな触媒設計の指針を示すものとして極めて有意義なものである。また,次世代の物質合成法としても有望な超効率的二酸化炭素固定化反応を実現した点でも極めて意義深い。
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今後の研究の推進方策 |
今回見出したギ酸塩を用いるカルボキシル化反応について,さらなる展開を試み,有用な物質合成法として確立することを目指す。また,従来のPEP-型(E=高周期14族元素)とは異なる配位子設計について検討し,高周期14族元素配位子の新たな可能性を模索する。とりわけ,炭化水素の炭素-水素結合活性化反応など,不活性結合・不活性分子の新しい変換反応の開発に挑戦する。
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次年度使用額が生じた理由 |
26年度はおおむね科学研究費補助金で研究を遂行することができた。今後,触媒反応開発を活発に行うため,次年度はさらに消耗品費がかさむことが予想され,次年度へと持ち越すこととした。
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次年度使用額の使用計画 |
触媒反応開発に必要な有機試薬,無機試薬,ガラス器具の購入費に充てる予定である。研究が大きく進展した場合,必要とあれば,自動合成装置などの備品を購入する可能性もある。
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