研究課題/領域番号 |
24685007
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
依光 英樹 京都大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (00372566)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 芳香環リフォーム / ジベンゾチオフェン / ジベンゾフラン / トリフェニレン / カルバゾール / ホスホール / スピロテトラアリールメタン |
研究実績の概要 |
ある芳香環骨格から別の芳香環骨格への変換は芳香族安定化のため困難であり、有機合成上一般的かつ有用な手法としてあまり認知されていない。我々は複素芳香環の炭素―ヘテロ原子結合の切断を鍵として芳香環骨格の変換を行う「芳香環リフォーム」に精力的に取り組んでいる。 今年度は以下の方法を開発した. 1)ジベンゾチオフェンのカルバゾール,ホスホール,スピロテトラアリールメタンへの変換:ジベンゾチオフェンを酸化してジベンゾチオフェンジオキシドにまず変換する.これを,強塩基存在下,アニリン,フェニルホスフィン,ジアリールメタンと反応させると,対応するカルバゾール,ホスホール,スピロテトラアリールメタンが高収率で得られた.いずれの分子群も広いπ電子系を有しており、有機エレクトロニクス材料の基本骨格として重要である。 2)ジベンゾフランを三段階でトリフェニレンへ変換:本変換ではまずニッケル触媒存在下アリールグリニャール反応剤を用いてジベンゾフランの開環アリール化を行う。引き続いて、生成した2-ヒドロキシ-o-ターフェニルの水酸基をトリフラートへと変換した後に、分子内C-Hアリール化を施すことで対応するトリフェニレンを得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初は触媒的な芳香環変換手法の開発を目指していたが,ごく最近,高価な遷移金属触媒を使わずに芳香環変換が可能であることを明らかにした.遷移金属の残渣が生成物の生物活性や物性に微量混入するだけで影響を与えることがわかっており,今回の発見はその解決策として極めて意義深い.
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今後の研究の推進方策 |
より広範な芳香環を対象として,芳香環リフォームの概念を確立させる予定である. 特にチオフェン以外のフランやピロールを出発物質とした芳香環リフォームを目指したい.すでに【研究実績の概要】で述べた通り,ジベンゾフランのリフォームに成功しており,着実に研究を進める準備が整っている.
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次年度使用額が生じた理由 |
研究が順調に進んでおり,当初の計画以上に進展を見せている.研究費も節約できており,より効率的な一段階反応を目指して,反応の完成度を一層高めるべく追加実験を行う.
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次年度使用額の使用計画 |
2016年秋に上海で開催される有機硫黄化学の国際会議において成果を発表するため,補助事業期間を延長したい.
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