研究課題/領域番号 |
24685009
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研究機関 | 独立行政法人理化学研究所 |
研究代表者 |
村中 厚哉 独立行政法人理化学研究所, 内山元素化学研究室, 研究員 (20374902)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 芳香族性 / ヘミポルフィラジン |
研究概要 |
本研究は、20π電子構造を持つ非芳香族性ヘミポルフィラジンから18πや22π電子構造を持つ芳香族性ヘミポルフィラジンを合成し、その芳香族性、スイッチ機能などの基礎物性を明らかにすることを目的としている。本年度は、2つのレゾルシノール部位と2つのイソインドリン部位から構成される18π芳香族性ヘミポルフィラジン(1)の金属錯体の合成を行い、その性質を調べた。ジクロロメタン中室温で化合物1とビズ(ジベンジリデンアセトン)パラジウム(0)を反応させて、化合物1のパラジウム錯体を得た。この錯体は、2価のパラジウムイオンが骨格の中心に存在し、2つの金属‐炭素結合を持つ初めての芳香族性ヘミポルフィラジン金属錯体であることが単結晶X線構造解析、NMR測定から明らかとなった。無金属体の場合では、溶液中に還元剤を添加することで20π電子構造を持つ非芳香族性化学種に変化したが、パラジウム錯体では同じ条件では還元されず、18π芳香族性が安定化することが確認された。化合物1のパラジウム錯体と無金属体の結晶構造は類似していたが、パラジウム錯体になることでヘミポルフィラジンの面間距離が約0.1オングストローム短くなり、ππスタッキングが強くなることが示唆された。1つのレゾルシノール部位と3つのイソインドリン部位から構成されるヘミポルフィラジン(2)に関しては、酢酸パラジウム(II)と反応させることで中心にパラジウムが挿入された錯体が得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
18π電子構造を持つヘミポルフィラジンの合成と基礎物性の評価いついてはほぼ研究計画通りに進展しているが、22π電子構造を持つヘミポルフィラジンの合成に関しては当初の予定からやや遅れているため。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は1つのレゾルシノール部位と3つのイソインドリン部位から構成されるヘミポルフィラジンの金属錯体の芳香族性や酸化還元特性などの物性を詳細に調べる。22π電子構造を持つヘミポルフィラジンの存在を確認するために、還元されやすいヘミポルフィラジンについて電解吸収スペクトルを測定し、理論計算との比較をする。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究協力者(研究補助パートタイマー)が期間途中で退職することとなり、当初予定した人件費、消耗品費よりも少ない額の使用となったため。 次年度使用額は主に消耗品費として使い、効率的に研究を進めるための実験器具等を購入する。
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