研究課題/領域番号 |
24685010
|
研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
佐藤 宗太 東北大学, 原子分子材料科学高等研究機構, 准教授 (40401129)
|
研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
キーワード | 自己組織化 / 生体分子 / パラジウム / 分子認識 / 糖鎖 |
研究概要 |
本研究では,数ナノメートルの球状分子の表面を,糖鎖などの生体関連分子で覆い,生体界面を模倣した,高度に構造制御された生体分子クラスターの合成を行う.そして,この生体分子クラスターと基質との間の特異な相互作用の発現を探索する.球状分子としては,独自に開発してきた、自己集合性球状錯体を基盤骨格とし,選択的な官能基化法を鍵反応として使うことで,生体関連分子を錯体表面に整然と,かつ高密度に集積した錯体を合成する.この分子設計した生体模倣クラスター上では,個々の生体分子の分子認識能力は弱くても,クラスター化することで相乗効果が生まれ,錯体分子全体としては十分な強さの分子認識力が期待される.今回,凝集性タンパク質と相互作用して凝集の引き金となると考えられている生理活性糖であるガングリオシドGM1の糖鎖部分を切り出して,球状錯体の表面に固定化した錯体の合成と詳細な構造解析を完了した.さらに,いくつかの凝集性タンパク質との相互作用を検討し,核磁気共鳴を中心とした詳細な相互作用解析を行った.安定同位体を導入した凝集性タンパク質を用いることで,良好なスペクトルを得ることができ,解析の結果,タンパク質の相互作用部位を特定できることがわかってきた.ガングリオシドGM1には糖鎖部分と脂質部分があり,脂溶性の脂質部分があると,基質である凝集性タンパク質が脂質部分に捕捉されてしまい,興味のあるGM1クラスターの糖鎖部分との特異的な分子認識の様相を捉えることができない.本研究によって,脂質部位を除去した純粋な糖クラスターを構築することが可能となり,明瞭な相互作用解析に至った点が重要である.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
独自に開発してきた,生体分子修飾された球状錯体を基盤に,実際に生体内で凝集性タンパク質を認識し,病気の原因物質になるといった生理活性を有する糖鎖のクラスターを合成できた.この分子は分子量・分子サイズともに人工系では最大級に大きいが,様々な分析を併用することでその構造決定を達成できた.さらに,生体内でのGM1糖鎖クラスターと凝集性タンパク質との間の分子認識を,人工系で再現することができ,その認識の様相を高分解能な溶液の分析手法で明らかにできたことで,おおむね,研究は順調に進捗しているものと考えている.GM1分子の部分構造のうち,凝集性タンパク質を選択的に認識しているはずの糖鎖部分だけを切り出して,純粋な糖鎖クラスターを構築したことで,従来の脂質部分が残った基質を用いた場合には見えなかった特異認識がはじめて明らかになってきたことは,当初の期待通りではあるものの,重要な研究成果である.
|
今後の研究の推進方策 |
今後,これまでの研究成果をとりまとめるとともに,構築した糖鎖クラスターと凝集性タンパク質との相互作用解析を,これまでの予備的知見と合わせて完了させる.実際の生体内でのはたらきと照らし,人工系でモデル化することではじめてわかったことが明確になるように留意して研究を進める.
|
次年度の研究費の使用計画 |
購入を見込んでいた生体由来ガングリオシドGM1などの生理活性糖が,購入を見込んでいたほどの量は購入する必要が無くなったため.当初の予測よりも少ない量で実験検討を終わらせることができた. 生体分子修飾した自己組織化錯体の合成,構造確認,および凝集性タンパク質などの基質との相互作用解析に使用するため,薬品を購入する.
|