研究課題/領域番号 |
24685012
|
研究種目 |
若手研究(A)
|
研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
財津 慎一 九州大学, 工学研究院, 准教授 (60423521)
|
研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
キーワード | 紫外レーザー / 環境分析 / 超短パルスレーザー / 波長変換 / 質量分析器 |
研究概要 |
初年度では高性能レーザーイオン化質量分析計での応用を指向した広帯域紫外超短パルス光源の開発を主眼として研究を実施した。本研究では近赤外域の超短光パルスを基本光(波長:800nm)として、非線形光学効果である高次高調波発生を用いた紫外-深紫外域(波長:266nm)への波長変換および広帯域化を実施した。 1.Ti:Sapphire再生増幅器に、今年度の本研究経費で導入したモード同期発振器、および励起用グリーンレーザーを組み合わせて基本光となる高出力超短パルス光源(波長:800nm、パルス幅:10ofs)を得た。また、非線形光学結晶による波長変換装置を構築し、近紫外(波長:400nm)、深紫外(波長:266nm)を発生させた。これに加えて、遅延光学系を組み合わせた真空紫外光発生のための四光波混合過程誘起光学系を設置した。 2.紫外広帯域光発生の第1段階として、非線形媒質として気体のアルゴンを充填したステンレス製セルに基本光を入射し、高次高調波過程を誘起することによって第三高調波を発生させた。発生させた第三高調波のスペクトルは結晶を用いた波長変換による第三高調波のスペクトルよりも5倍拡大していることを明らかにした。 3.アルゴン圧に対する第三高調波の強度依存性を計測したところ、アルゴン圧が0,4atmにおいて強度のピークが確認できた。 その後、強度の減少が起こったが、ガス圧を増加し続けるにつれて再び強度が増加した。最初に強度のピークが測定されたのは最適なアルゴン圧においてアルゴンのプラズマ化が起こり、位相整合条件が満たされたことによるものであると考えられる。一時的に強度が減少したのは、アルゴン圧の変化に伴う位相不整合によるものであり、再び強度が増加したのは気体密度の上昇が大きく影響していると思われる。 4.第三高調波の入射光強度依存性を測定した。理論では、第三高調波の強度は基本光の強度の3乗に比例して増加するはずであるが、測定結果では2.5乗に比例して増加していた。これは入射する基本光の強度を増加するにつれて、アルゴンの光イオン化や自己位相変調など他の非線形光学効果の影響によるものだと考えられる。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新しい高性能レーザーイオン化質量分析装置を開発するという研究目的に対して、初年度はそのための光源開発を主眼として研究計画を立案していた。計画の通りに、波長変換光学系を構築し、また、スペクトル拡張法としては、高次高調波を採用し、その結果、約5倍のスペクトル拡張に成功した。これはおおむけ研究計画に従った順調な進展である。
|
今後の研究の推進方策 |
次年度は、今回実現した広帯域紫外レーザー光源の更なる波長領域の拡大を目標と1つとする。高次高調波過程に加えて、位相整合四光波混合も利用し、真空紫外光発生を検討する。問題として、予定していた真空紫外計測系が使用できないので、新たにこれを作製する必要がある。また、開発した光源の質量分析装置への応用をできるだけ速やかに進展したいと考えている。
|
次年度の研究費の使用計画 |
次年度は大きな設備を導入する経費はないので、主に波長域拡大のための光学系および、深紫外・真空紫外光測定装置のために経費を使用する。また、得られた成果の公表、および関連する研究調査のための旅費としても一部を使用する。
|