1.四光波混合過程における深紫外・真空紫外波長変換効率の最適化に関する検討 昨年度に実施した、チタンサファイヤ再生増幅器出力基本波(800 nm)の第2高調波(400 nm)と第3高調波(266 nm)の四光波混合による深紫外光(第4高調波: 200 nm)発生において明らかにした媒質ガス(アルゴン)最適圧力条件(0.7 atm)を元に、真空紫外光(第5高調波: 160 nm)発生の最適条件を理論的に検討した。その結果、深紫外光発生の最適条件は、位相整合条件を満たすコヒーレント長が、ビーム集光条件に依存する共焦点距離で決まることが明らかになった。この条件下で真空紫外光発生の最適媒質ガスを算出し、0.02 atmであることを示した。 2.真空紫外光測定分光装置の構築 昨年度に準備した真空紫外分光器を内包した窒素充填チャンバーと媒質充填ステンレス製セルを結合し、真空紫外光発生・計測装置を完成させた。装置中に新たに配置したレンズ・窓材・ミラーが真空紫外伝達能を有することをD2ランプからの放射光計測によって評価し、真空紫外光測定装置として十分な性能を有することを確認した。 3.レーザーイオン化質量分析光源としての深紫外・真空紫外光発生とその評価 完成した真空紫外光測定装置を用いて、予想される最適条件下で真空紫外光(第5高調波: 160nm)の計測を実施したが、この発生を示す信号は観測できなかった。この原因は、基本波および第3高調波パルスの時間幅が最適化されていなかったことであると考えている。非共鳴な四光波混合過程においては、パルス光の瞬間的な強度がその効率を決定する。本実験においては、時間幅100fsを想定していたが、波長変換の過程においてより伸長し、瞬間強度を低下させていた。それゆえ、分散補償による時間幅圧縮を実施することで、真空紫外光の発生が期待できる。
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