研究概要 |
配位子混合型の錯体である[Cu(bdc)1-x(dvbdc)x(ted)0.5]n(1)(bdc=benzene-1,4-dicarboxylate,dvbdc=2,5-divinylbenzene-1,4-dicarboxylate,ted=triethylenediamine)を様々なxの値で合成した。1はXRPD測定から、その構造が[Cu(bdc)(ted)0.5]nと同様のものであることが確認され、dvbdcが骨格内に分散していることが示唆された。1が有する一次元細孔内にビニルモノマーと重合開始剤を導入し、窒素雰囲気下70℃で重合を行った。XRPD測定から重合後もホスト錯体はその構造を保持しており、TGA測定から重合の進行が確認された。得られた複合体をNa-EDTA水溶液と塩酸で処理することによって高分子を単離した。TGA、IR測定から、ホスト錯体が十分に除去され、dvbdcにより架橋された高分子であることが確認された。 本手法により合成されたポリスチレン(PSt)のDSC測定を行ったところ、架橋性配位子xの値が増えていくに従って、PStのガラス転移点が上昇していく傾向が見られた。このような挙動は通常のクロスリンク型PStでも見られる現象であり、我々が合成した高分子も架橋構造を有していることが示唆された。 また、SEM測定より単離後のPStのモルフォロジーは、元々のホスト錯体と変わらないことが分かった。つまり、巨視的な高分子鎖の配向が保持されていることが示されたので、窒素吸着測定を行うと、通常のバルクPStでは見られない、メソサイズの空間を有していることが示唆された。つまり、このような空間が存在することで、単離後のPStの形状が保持されているということが示唆された。 そこで、詳細な配向状態を調べるために高分解能TEM測定を行った。その結果、ポリスチレンが1軸方向にきれいに配列している像が確認された。FFT解析により、高分子鎖の配列を調べてみると、ホスト錯体のtetragonalsymmetryを反映した配列をしていることが示唆された。また。暗視野TEM測定より、PSt粒子の結晶性部分の大きさの測定を行うと、サブミクロンレベルの広い範囲に渡ることが示された。これらの結果から、PStは比較的長距離のオーダーで配向を保持していることが示された。
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