研究課題/領域番号 |
24685019
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研究機関 | 崇城大学 |
研究代表者 |
黒岩 敬太 崇城大学, 工学部, 准教授 (70336006)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 自己組織化 / 超分子錯体 / ポリペプチド / 混合原子価錯体 |
研究概要 |
本研究では、両親媒性ブロックコポリペプチドを用いて、2核金属錯体を集積固定化できる高度な場の創成を行う。さらに、両親媒性ポリペプチドのアロステリックな構造変化を利用して、2核金属錯体の電子的コミュニケーションを生み出し、ポリペプチド分子界面での電子情報伝達システムを構築する。このことから、ポリマー-金属錯体集積体から形成される、超省エネルギーの電荷伝播システム(電子回路)創成への概念提出を目指す。 本研究では、脂質あるいは両親媒性ポリペプチドと金属錯体の組み合わせによって、単純な配列固定化にとどまらない金属錯体の分子間コミュニケーションが発現できることが大きな特色である。さらに、両親媒性ポリペプチドがもたらすアロステリックな構造相転移が金属錯体の電子状態制御を制御可能であることも念頭に置いている。一般的に、金属錯体の電子軌道に影響を及ぼすためには、それと同等の結合(共有結合、配位結合)が非常に重要とされるが、これまでに申請者らは、金属錯体の電子的相互作用が、超分子的なナノ構造空間でも制御されうることを示しつつあり、この知見は、本申請課題によってより明確に提案できるものと期待している。 これまでに、アミノ酸N-カルボキシ無水物の開環リビング重合によりブロック型のオリゴペプチドを合成した(分子量分布1.1程度)。カチオン性金属錯体との静電的相互作用による集合組織化を目指して、アニオン性アミノ酸(Y, E, D)を、疎水性ブロックとして、L, I, Fを導入する。合成は、グローブボックスにて嫌気下にて行い、NMR、GPCによって評価した。さらに、ポリマーの重合度やブロックの比率(m : n)を変化させることによって、スフェア、ベシクル、ファイバーを系統的に作り分ける条件をUV-vis、CD、TEMで評価した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、両親媒性ブロックコポリペプチドを用いて、2核金属錯体を集積固定化できる高度な場の創成を行う。さらに、両親媒性ポリペプチドのアロステリックな構造変化を利用して、2核金属錯体の電子的コミュニケーションを生み出し、ポリペプチド分子界面での電子情報伝達システムを構築する。このことから、ポリマー-金属錯体集積体から形成される、超省エネルギーの電荷伝播システム(電子回路)創成への概念提出を目指す。 既に申請者らは、脂質あるいは両親媒性ポリペプチドと金属錯体の組み合わせによって、単純な配列固定化にとどまらない金属錯体の分子間コミュニケーションの発現を可能としており、論文に数報公開している。特に、両親媒性ポリペプチドがもたらすアロステリックな構造相転移が金属錯体の電子状態制御を制御可能であることが、最近の研究成果で明らかとなってきている。さらに、申請者らは、金属錯体の電子的相互作用が、超分子的なナノ構造空間でも制御されうることを示しつつあり、この知見は、本申請課題によってより明確に提案できるものと期待している。 一方で、新しいポリペプチドの合成について、アミノ酸N-カルボキシ無水物の開環リビング重合によりブロック型のオリゴペプチドを合成した(分子量分布1.1程度)。カチオン性金属錯体との静電的相互作用による集合組織化を目指して、アニオン性アミノ酸(Y, E, D)を、疎水性ブロックとして、L, I, Fを導入する。合成は、グローブボックスにて嫌気下にて行い、NMR、GPCによって評価した。さらに、ポリマーの重合度やブロックの比率(m : n)を変化させることによって、スフェア、ベシクル、ファイバーを系統的に作り分ける条件をUV-vis、CD、TEMで評価できた。よって、おおむね順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに、両親媒性ポリペプチドの合成や金属錯体との複合化の条件を明らかにしてきた。最終年度は、混合原子価錯体の局在化した電荷状態(ビフェロセニウムの場合、FeII-FeIII)をポリペプチドに配列させ、エネルギー障壁EthをUV-vis-NIRスペクトルや電気化学的測定(CV測定etc)を用いて評価していく。さらに複合体中における電荷スイッチングについて、UV-vis-NIRスペクトルや、CV測定にて評価し、個々のエネルギー障壁Ethがポリペプチドとの複合化によってどう変化するかを評価し、集合体ならではの電荷分離状態を生み出す条件を確認する。 電荷整列について、走査型プローブ顕微鏡を駆使して、電位掃引、基板の制御などの外部刺激に対する評価を行う。このことから、混合原子価錯体の電荷整列について評価していく。また、電荷分離条件について、電場印加や光照射による効果を検討する。電場印加や切断によって形成されるポリペプチドの構造緩和やそれに伴うアロステリック効果によって、電荷の整列やランダム化の時間依存性を、過渡吸収スペクトルや時間分解蛍光スペクトルなどによって検討する。これらのことから分子システムとしての電荷分離状態の伝播構造を明らかにする。また、基板上に配列固定化したこれらの複合体についての走査型トンネル顕微鏡での電子状態の評価を行う。以上のことから、電荷秩序のドミノ式伝播(ドミノモーション)が起こる最適条件を探索し、本研究の最終目的に到達する。
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