研究課題/領域番号 |
24685021
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
深港 豪 北海道大学, 電子科学研究所, 助教 (80380583)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | フォトクロミズム / 蛍光スイッチング / 超解像顕微鏡 / ナノ粒子 / エネルギー移動 |
研究概要 |
本研究では近年著しい発展を遂げている超解像蛍光イメージングの分野において特に注目されている『光スイッチング型RESOLFT顕微鏡』に要求される特性をすべて満足する新しい蛍光スイッチング分子の開発を目指している。 平成25年度の研究では、より安定な蛍光スイッチングシステムを確立するために、ナノ粒子状態において優れた蛍光特性と高い耐久性を併せ持つ分子の設計・合成および機能の評価を行った。要求される条件を全て満足し得る分子として、ナノ粒子などの凝集状態においても高い蛍光特性を示すベンゾチアジアゾール色素とスイッチングユニットであるジアリールエテン分子を非共役なメチレン鎖でつないだ蛍光性のジアリールエテン誘導体を開発した。合成した分子は紫外光-可視光照射に伴い、溶液中において可逆的なフォトクロミズムを示した。また、開環体の状態で強い蛍光が観測され、閉環体の生成に伴い線形的にその蛍光が消光することが認められた。続いて、この分子のナノ粒子を再沈殿法により作成し、ナノ粒子状態におけるフォトクロミック特性および蛍光特性を調べた。その結果、紫外光-可視光照射に伴い溶液中と同様に可逆的なフォトクロミズムと開環体で溶液の時と同程度の強い蛍光性を示し、光閉環反応に伴い蛍光強度が減少することが認められた。さらに溶液状態の時とは異なり、その蛍光消光は線形的には起こらず、わずか数%の閉環体が生成しただけで完全に蛍光が消光する非線形的な蛍光消光現象が認められた。 得られた結果は、一つのナノ粒子内のわずか数個の分子が反応するだけでナノ粒子全体の蛍光をスイッチできることを意味しており、非常に高効率な蛍光スイッチングシステムであると期待される。さらに必要とする照射光量を大幅に減らすことができるため、耐久性の向上も期待される。以上のことから、本研究目的に対して極めて有力な分子であると期待している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでの研究により、『光スイッチング型RESOLFT顕微鏡』に適用する上で必要とされる基本的な要求は満足する分子システムの開発をすることが既にできている。残された課題は、実際に『光スイッチング型RESOLFT顕微鏡』による超解像イメージングを行っていく上で必要になってくると思われる分子物性の最適化であるが、これまでに得られた分子設計に対する知見から、十分にカバーできるものと考えられるため、概ね順調に研究は進展しているものと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究では、これまでの研究で開発してきた非線形的な蛍光消光を示す蛍光性フォトクロミックナノ粒子を用いて、実際に『光スイッチング型RESOLFT顕微鏡』におけるプローブ分子となり得るかについて検討する。 具体的には、蛍光顕微鏡下における単一ナノ粒子状態での蛍光スイッチング挙動および繰り返し耐久性の評価を第一に行う。十分な蛍光強度と繰り返し特性が確認されない場合、スイッチングユニットと蛍光ユニットのどちらに問題があるのかを明らかとし、分子物性の最適化を図る。『光スイッチング型RESOLFT顕微鏡』への応用に対して十分な物性が確認された後は、実際に光スイッチング型RESOLFT超解像イメージングの実験を行い、達成される空間分解能、イメージング速度、およびどの程度繰り返して計測できるかについて評価を行う。その結果をもう一度分子合成にフィードバックさせ、光スイッチング型RESOLFT顕微鏡用の蛍光スイッチング分子としての最適化を追求する。 これにより、究極的な一分子(一粒子)スケールの空間分解能を有する超解像蛍光イメージングの実現を目指す。
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次年度の研究費の使用計画 |
当初購入を予定していた機器に対して、同等の性能でより安価な機種が発売されたため、そちらを購入した結果、その差額が次年度使用額として生じた。 研究を円滑に遂行するための消耗品費として使用する。
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