研究実績の概要 |
本研究では、平成26年度のノーベル化学賞の受賞に見られるように、近年著しい発展を遂げている超解像蛍光イメージングの分野において特に注目されている『光スイッチング型RESOLFT顕微鏡』に要求される特性を満足する新しい蛍光スイッチング分子を開発することを目的としている。 平成27年度の研究では、フォトクロミズムに伴う分子内エネルギー移動効率の光制御により、光可逆的に蛍光強度を変化させる蛍光スイッチング分子をナノ粒子化することで、僅か数%程度の光反応転換率で系全体の蛍光強度が完全にON/OFFスイッチする超高効率な蛍光スイッチングシステムを見出すことに成功した(Angew. Chem. Int. Ed., 2016, 55, 3662-3666:“Hot Paper”および“inside back cover”に選出)。 開発した蛍光性フォトクロミックナノ粒子は、単一のナノ粒子でも顕著な非線形蛍光スイッチング挙動を示すことが認められ、系中の約2 %の分子が光反応すればひとつの粒子全体の蛍光が完全にON/OFFスイッチングすることが明らかとなった。実際に、『光スイッチング型RESOLFT顕微鏡』の応用の際に必要となる顕微鏡下での蛍光スイッチング特性を単一ナノ粒子のレベルで評価した結果、数百回の蛍光スイッチングを繰り返した後でも十分に蛍光強度が保持されることが認められた。このことは、蛍光のスイッチングに僅かな分子の光反応しか必要としないため、高効率な非線形蛍光スイッチング挙動が繰り返し耐久性の向上に大きく寄与していることを示唆している。これらの蛍光スイッチング特性は、目的とする『光スイッチング型RESOLFT顕微鏡』のための蛍光スイッチング分子として極めて有用であるものと期待される。
|