研究課題/領域番号 |
24685023
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
小山 靖人 北海道大学, 触媒化学研究センター, 准教授 (10456262)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 超分子化学 / 高分子合成 / 有機化学 / らせん高分子 / 空間集積 / メカノクロミズム |
研究実績の概要 |
本研究では、非共有結合でありながらも共有結合と同等の結合力を持つ空間結合をポリマーの架橋点に組み込むことで、可逆的変色が可能で、強くしなやかなメカノクロミックエラストマーを創製することを目的に研究を推進した。 本年度は前年度までに検討してきたロタキサン材料の創製と特性評価に関する報告を発表したことに加え、より柔軟性の高い空間結合素子(構造改変アミロース)の開発について重点的に検討を行った。 結果として、主に以下に示す成果を得た。①ポリロタキサンネットワークの従来法を外観したうえで、我々が開発した方法の利点についてまとめ、新しいロタキサン架橋素子であるサイズ相補性シクロデキストリン型ロタキサンの特性についてまとめて報告した。②アミロースの主鎖骨格にアルキル基を規則的に組み込んだ構造改変アミロースを創製した。具体的にはアルキン含有オリゴマルトシルアジドの簡便合成法を開発し、それを重合することでグルコースユニットの向きを完全に制御し、トリアゾールを含むスペーサーを規則的に含むポリマー(構造改変アミロース)を各種簡便に調製する方法論を開発した。③構造改変アミロースは繰り返し構造(糖部位の連続数やアルキル置換基の構造)に由来した特異的なゲスト包接挙動を示し、そのポリマーの構造によって取り込まれたゲストの発色が変化することを明らかとした。またゲストに対し、構造改変アミロースからの分子間不斉誘起が起こることも明らかとした。現在合成ポリマーの高次構造及びゲスト取り込み挙動のメカニズムの解明について検討を推進している。またこうした空間的な集積法を活用することで目的とするメカノクロミックエラストマーの創製についても検討している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初予定していたロタキサン素子・素材の特性評価に加え、バイオポリマーの主鎖構造に手を加えた「構造改変アミロース」の合成法を確立し、様々な類縁体の合成も達成し、空間材料設計・合成において順調な成果を挙げているため。また得られたポリマーのキロプロティカル特性や、高分子の構造に依存した特異なゲスト取り込み挙動の精査において期待以上の現象を観測した。その一方、材料開発という観点においては、まだ十分な成果が得られていないため、今後その点に集中して研究を行う。
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今後の研究の推進方策 |
今後、本年度までの研究成果を基にして、発色(発光)性超分子材料を複合化したメカノクロミック材料の創製を目指す。具体的には発色(発光)性素子の空間的集積法について更に検討を進めるのみならず、超分子素子をゲルの架橋点に合理的に組み込む方法論の確立、力学特性を考慮した材料設計・創製、及び得られた超分子材料の特性評価について、それぞれ重点的な検討を行う。また空間集積型材料の応用展開についても考えており、刺激応答性を示す不斉触媒場、ドラッグデリバリーシステム、ラセミ化合物の分離分割材料などへの展開について併せて探索を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究はほぼ予定通り進行しているが、当初予定していた発色(発光)素子と高分子の複合化の研究が未だ遅れており、それにかかる消耗品の購入ができなかったことや、それに関する成果報告が遅れているため。
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次年度使用額の使用計画 |
今年度において、上記の内容の研究を実施するため、本年度分に加えて、主に消耗品として使用する予定である。また成果報告発表を学会などで適切な時期に行う予定であるため、旅費としても使用することを計画している。
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