研究実績の概要 |
本研究では、非共有結合でありながらも共有結合と同等の結合力を持つ空間結合をポリマーの架橋点に組み込むことで、可逆的変色が可能で、強くしなやかなメカノクロミックエラストマーを創製することを目的に研究を推進した。 申請者の所属部局の組織改編やその後の異動のため、研究期間の延長を余儀なくされたが、結果として、これまでに検討してきたロタキサン材料の創製と特性評価に関する成果を取りまとめることができ、さらにこれまでの知見に基づいて新たな空間結合素子数点の開発を達成した。 主に以下に示す成果を得た。[1]gamma-cyclodextrinがPEG鎖を同一内孔に2本取り込む特性を利用し、新しいロタキサン架橋剤(gamma-CD+PEG型マクロモノマーからなる疑似架橋体)を開発した。その架橋剤をビニル重合系に添加することで、任意のビニルポリマーの架橋点にロタキサン構造を簡便に導入することが可能となった。またその機械的特性も評価した。[2]アミロースの主鎖へスペーサー構造を規則的に導入したアミロース誘導体を5種合成し、それらが新しいホストポリマーとして機能することが分かった。ホスト能を詳細に解析した結果、スペーサーの導入間隔の制御によって、らせん内孔の形・サイズが変化し、ゲスト取り込み能が変化することが分かった。[3]金属イオンで構造を変化させるらせんフォルダマーとして、1,2-グリコシド型ポリマーの研究を推進した。その結果、環状サルファイトのカチオン性開環縮合重合によって、主鎖からの完全なSO2の脱離が進行し、対応するポリマーが効率的に得られることが分かった。またポリマーの構造特性を評価した。[4]ペプチド型空間材料の創製を目指し、従来までにないペプチド交互共重合体のワンポット合成法を開発した。また不斉制御に基づくペプチドのヘリックス形成についても検討した。
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