研究課題/領域番号 |
24685026
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研究種目 |
若手研究(A)
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
久木 一朗 大阪大学, 大学院・工学研究科, 助教 (90419466)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 多孔質材料 / 水素吸蔵 / ガス吸着 / 金属-有機フレームワーク / アセチレン / デヒドロベンゾアヌレン |
研究概要 |
不飽和度の高いアセチレンを集積させた多孔性材料は、物理的、化学的に水素を吸蔵できる可能性を秘めている。本研究では、アセチレンを明確な幾何配置に固定した環状共役分子(DBA)を用いて、多孔性配位ポリマーを構築し、物理的および化学的な水素吸蔵が可能な材料の開発を目指している。本年度は、DBAとガスとの親和性の理論計算、リンカーの合成、DBA-MOFの構築、および構造解析を行い、さらにDBA-MOFの活性化について検討を行った。 まず、ヘキサデヒドロトリベンゾ[12]アヌレン(T12-DBA)の環中心ポケットにおける種々のガス分子との親和性をab initio計算によって評価した。その結果、水素、窒素、および二酸化炭素に対して、それぞれ0.84、1.70、および3.07Kcal/molの親和性があることが明らかとなった。また、共同効果についても検討を行ったところ、誘起効果と立体反発が同時に生じるために、非常に小さいことがわかった。次にリンカーとして、カルボキシル基、カルボキシフェニル基、およびイソフタリル基をもつC3対称性のT12-DBA誘導体(1、2、3)の合成を行った。得られたリンカーを用いて、既に報告されている水熱合成法を基に条件を最適化することによって、DBA-MOFの合成を行った。このうち、1と亜鉛(II)あるいは銅(II)から構成されるMOF、2と亜鉛(II)から構成されるMOF、3と亜鉛(II)あるいは銅(II)から構成されるMOFの単結晶X線構造解析に成功した。いずれのMOFも結晶内部に大きな空孔が存在し、その空孔はチャネルによって連結されているため、ガス吸蔵には適した構造であった。しかし一方で、その高い多孔性のためにこれらのMOFは構造変化を起こしやすいことがわかった。種々の条件下において、MOFの活性化(構造を維持したまま空孔内を占める溶媒分子を除去すること)について鋭意検討中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
種々の易揮発性溶媒による置換とそれに続く真空加熱によってMOFの活性化(多孔性構造体内部に包接された溶媒分子を、多構成構造を保ったまま除去して吸着可能な空間を構築すること)を試みたが、いずれの場合でもガス吸着には不十分であるため、例えば超臨界流体中での活性化などについてさらなる検討が必要でる。
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今後の研究の推進方策 |
活性化条件を見出し、担持金属が無い状態のMOF(アポMOF)の資源ガス吸着能について評価を行う。 活性化については、海外の共同研究者の研究室においても条件検討を行う。 また、金属を担持したMOFの合成を行うために、まず各種リンカーと金属(Li,Co,Ni等)との錯形成挙動につい〓〓べ、最適な錯体形成条件を確立する。
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次年度の研究費の使用計画 |
共同研究者とともに遂行するガス吸着実験まで行うことができなかったので、未使用額が発生した。来年度は、海外の共同研究者の施設への訪問と、活性化およびガス吸着実験を予定しており、繰越額はそこで使用する。既に、共同研究者との来年度の計画は議論できている。
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