研究概要 |
有機半導体において、一重項励起子から二つの三重項励起子を生成する「一重項分裂」という現象が知られている。本研究では、高い一重項分裂効率を示す材料群の創出と有機薄膜太陽電池での200%に迫る光電変換効率を目指す。構造を明確に規定できる中・低分子材料を中心に開発を進め、蒸着および塗布型有機薄膜太陽電池に適用する。共鳴構造の寄与により、小さい基底一重項/三重項エネルギー差が期待できる、ビラジカル性化合物を量子化学計算により予測し新材料を設計する。低い励起三重項準位が期待でき、励起一重項分裂性化合物候補となり得るアリールエテン構造を中心に材料開発を進めていく。ピレン誘導体はサブμ秒オーダーの蛍光寿命を有しており、長い励起子拡散長が期待できるため、有機薄膜太陽電池での活性層としても検討する。9,9-ビフルオレニリデンは、隣り合うフルオレン間の立体障害により中心の二重結合がねじれるために部分的にビラジカル性を有していると考えられる。ラジカル性由来のSOMO準位の寄与により、HOMO-SOMO間、LUMO-SOMO間で電子遷移が起こるため吸収波長が長波長化すると考えられる。このような特性は有機薄膜太陽電池での活性層に応用が期待できる。9,9'-ビフルオレニリデンに、CT吸収による長波長領域の吸収を持つヘキシルビチオフェニルベンゾチアジアゾールを導入した(BTTh_2)_2BFを合成し、熱・光電子物性を評価した。
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