研究課題
若手研究(A)
近年の有機半導体材料の進歩により有機エレクトロニクスの発展は目覚ましく、実用化に向けた気運が急激に高まっている。一方で、高性能な半導体ポリマーを創出する上で、分子設計上、真に重要なポイントが何であるか解明することは避けては通れない道であり、今一度、学術的見地からそれを考える必要がある。本研究では、キャリア輸送効率化と有機半導体デバイスの高性能化に向けた半導体ポリマーの配向制御を目指し、分子科学的アプローチから新規半導体ポリマーの創出と、それに向けた分子設計指針確立を目的とする。種々の分子骨格を基盤としたポリマーを検討する中で、今年度はナフトジチオフェンとナフトビスチアジアゾールを有するポリマーにおいて、可溶性基であるアルキル基を適切な位置に導入することで、ポリマーの溶解性および配向性を制御することができ、これらポリマーを用いた有機薄膜太陽電池において、世界最高レベルのエネルギー変換効率8.2%を得た。チアゾロチアゾール系ポリマーにおいては、アルキル基の組み合わせにより、ポリマーの配向性を精密に制御することが可能になり、これによって太陽電池の効率が5%から7%まで向上した。さらに、face-on配向性を持つポリマーは、キャリア輸送性の向上により、従来困難であった活性層厚膜化による太陽電池の高効率化が可能であることを見いだした。また、キナクリドン系ポリマーでは、ポリマーの電子状態を詳細に解析することで、本系においてキャリア輸送性がポリマーの配向性に依存しないこととの相関関係を見出すことができた。
1: 当初の計画以上に進展している
これまでポリマーの特性向上において、ポリマーの配向性が重要であることは長年議論されながら、分子科学的にこれを制御することは非常に困難であった。今年度、アルキル基の精密な配置、形状、長さにより精密な配向制御が可能であることを明らかにした。また、これにより、特に太陽電池においてはface-on配向性ポリマーにて、厚膜化による高効率化が可能であることを見出した。
ポリマー主鎖骨格と配向性との相関、あるいは、電子状態をどのように制御するか、などに注力していく予定。
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