研究課題/領域番号 |
24685032
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研究機関 | 分子科学研究所 |
研究代表者 |
山根 宏之 分子科学研究所, 光分子科学研究領域, 助教 (50402459)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 有機半導体 / 薄膜・界面 / 角度分解光電子分光法 |
研究概要 |
有機半導体の電気伝導は、有機エレクトロニクスの重要な素過程の一つである。このような物質の電気特性を理解するうえで、エネルギーと波数の関係「エネルギーバンド分散 E(k)」は、直接的な知見を与える。有機固体のE(k)関係(以降、分子間E(k)関係と呼ぶ)では、固体内部の分子の積層構造の周期性によって電子準位がバンドを形成し、その分散幅はユニット間の分子間相互作用(分子間での分子軌道の重なり)で支配される。このような分子間E(k)関係は、光電効果で放出された電子のエネルギー固有値の波数空間分布で求まるため、角度分解光電子分光法(ARPES)でE(k)を決定できる。しかし、一般的な有機半導体では、分子間相互作用が弱いvan der Waals力によるため、バンド幅が非常に狭く、さらに分子間E(k)関係の測定に必要な高秩序膜の作製が難しい。これらの要因が分子間E(k)関係の実測を困難にしており、実際に、分子間E(k)関係の測定例の多くは実測が容易な分子間相互作用が大きな系に限られていた。 本研究では、一般的にバンド幅が非常に小さい有機半導体の分子間E(k)測定における問題を解決することで、有機半導体の分子間E(k)関係の精密評価法を確立し、有機半導体の分子間E(k)関係を系統的に研究する。これらに基づき、有機半導体の電気伝導特性と結晶構造の相関を定量的に解明する。 本研究の第二年度では、様々な分子結晶膜を作製し、それぞれのエネルギーバンド構造を精密評価することで、分子間π-π相互作用と結晶構造の相関を解明することに成功した。本成果はPhysical Review Letters誌に掲載され、科学新聞および日本工業新聞にも紹介された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究が順調に進んでいるため、引き続き、研究計画に沿った研究を行う。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究では、ペリレンやコロネンなどの多環芳香族炭化水素の二次元分子シートの作製を行い、その電子状態の精密評価を行う。特に二次元分子シート内の分子間距離の違いによる価電子構造の微小変化を追跡することで、π電子系に対する分子間σ-σ相互作用の影響を解明する。
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次年度の研究費の使用計画 |
当初見込んでいた価格よりも安くかつ高性能な機器を購入したため。 出張旅費および新規物品の購入費に充てる予定である。
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